政府は3日、成年後見制度を抜本的に見直し、必要な事柄と期間に限定した部分的な利用を可能とする法案を今国会に提出する方針を固めました。現行制度では、認知症や知的障害などで判断能力が不十分とされる人について、原則として全ての法律行為を後見人が代行する包括的な仕組みとなっていますが、本人の意思を尊重し、自己決定権を最大限保障する制度への転換を図ります。
現在の成年後見制度は、家庭裁判所が後見人を選任し、財産管理や身上監護を包括的に委ねる仕組みとなっています。しかし、本人が望まない場面でも後見人の同意や代理が必要となることが多く、自己決定権の制約が指摘されてきました。厚生労働省の統計によると、2024年末時点で成年後見制度の利用者数は約24万人となっており、高齢化の進展とともに今後さらなる増加が見込まれています。
新たな制度設計では、本人の判断能力や生活状況に応じて、必要最小限の範囲で後見人の権限を設定できるようになります。例えば、不動産の売却や高額な契約締結時のみに限定したり、一定期間後に自動的に後見関係が終了する仕組みなどが検討されています。また、本人の意思を定期的に確認し、状況の変化に応じて後見の範囲を柔軟に変更できる制度も盛り込まれる見通しです。
制度見直しの背景には、国連の障害者権利条約が求める「法の前の平等」の理念があります。同条約は、障害者が他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを定めており、包括的な後見制度は本人の権利を過度に制限するとの指摘がありました。政府は2022年に同条約の国連審査を受けた際にも、成年後見制度の改革について言及していました。
法案には、後見人の選任プロセスの透明化や、本人の意向をより重視した選任基準の明確化も含まれる予定です。現在は親族が後見人となるケースが約2割にとどまり、約6割を弁護士や司法書士などの専門職が占めていますが、本人や家族の希望をより反映できる仕組みへの改善が図られます。
新制度の実現には、家庭裁判所の体制整備や関係機関との連携強化が不可欠となります。政府は段階的な制度移行を想定しており、施行までに2年程度の準備期間を設ける方針です。高齢化社会の進展とともに制度利用者の増加が続く中、本人の尊厳と自己決定権を最大限尊重しつつ、必要な支援を提供できる新たな枠組みの構築が注目されます。
