富士通は4月1日、純国産の先端AI半導体の開発に本格着手すると発表しました。経済安全保障の強化を目的として技術確立を進め、実際の生産については半導体受託製造会社のラピダスに委託する方針です。
この取り組みは、AI分野で圧倒的なシェアを持つ米エヌビディアなど海外企業への依存度を下げ、国産技術による半導体サプライチェーンの構築を目指すものです。富士通では既存のスーパーコンピューター「富岳」で培った高性能プロセッサー技術を基盤として、AI処理に特化した新世代チップの設計を進めています。
生産を担うラピダスは、トヨタ自動車やソニーグループなど日本の主要企業8社が出資して2022年に設立された半導体製造会社です。2027年の量産開始を目標に、北海道千歳市で最先端の2ナノメートルプロセス技術による製造工場の建設を進めており、総投資額は推計で5兆円規模とみられています。
現在のAI半導体市場では、エヌビディアが約80%のシェアを握る寡占状態が続いています。特に生成AIの普及により需要が急拡大する中、供給不足が深刻化しており、多くの企業が調達に苦労している状況です。このため各国政府は半導体の安定確保を重要課題として位置づけ、国産化への投資を加速させています。
富士通の今回の取り組みは、政府が推進する「次世代半導体戦略」とも連携しており、国からの支援も期待されています。同戦略では2030年代前半までに国内半導体産業の売上高を13兆円規模まで拡大する目標を掲げており、AI分野での技術的優位性確保が重要な柱となっています。
業界関係者からは、技術面での課題も指摘されています。最先端AI半導体の開発には膨大な研究開発費と時間が必要で、すでに市場で優位に立つ海外企業との技術格差を埋めることは容易ではないとの見方もあります。また、設計から製造、販売に至る一貫したエコシステムの構築も重要な課題となります。
今後の展望として、富士通とラピダスの連携による純国産AI半導体の実現は、日本の半導体産業復活への試金石となる可能性があります。技術確立の成否は日本の経済安全保障だけでなく、AI時代における国際競争力にも大きく影響することから、官民一体での取り組みの成果が注目されます。
