厚生労働相は17日の記者会見で、全国の一部医療機関において医療用手袋の確保が困難な状況になっているとの認識を示し、5月中に国家備蓄からの放出を実施する方針を明らかにしました。新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ整備された医療物資の備蓄制度が、実際の供給不足局面で活用されることとなります。
医療用手袋の供給不足は、主要な製造国での生産設備トラブルと、世界的な需要増加が重なったことが要因とされています。特に使い捨てのニトリル手袋については、国内需要の約8割を輸入に依存しており、海外からの供給が滞ったことで影響が拡大しています。
厚生労働省によると、現在確認されている供給困難な医療機関は全国で数十箇所とみられますが、地域によってばらつきがあり、特に地方の中小規模病院での影響が深刻とされています。同省では4月上旬から医療機関や卸売業者からの相談が急増していることを受け、緊急調査を実施していました。
国家備蓄からの放出は、2021年に整備された「医療物資緊急確保システム」に基づいて実施されます。このシステムでは、マスクや手袋、防護服などの医療物資を全国8箇所の拠点倉庫に備蓄しており、緊急時には迅速な供給が可能な体制を構築しています。手袋については推計で約1億枚の備蓄があるとされています。
放出される医療用手袋は、まず供給不足が深刻な医療機関を優先して配布される予定です。配布量は各医療機関の規模や診療科目に応じて決定され、通常使用量の2週間分程度を目安とする方針が示されています。配送は既存の医療物資流通ネットワークを活用して効率的に実施される見込みです。
業界関係者によると、医療用手袋の供給正常化には数か月程度を要する可能性があるとの見方が強く、今回の備蓄放出は一時的な緊急対応という位置づけです。同時に、国内製造能力の強化や調達先の多様化についても、中長期的な課題として検討が進められています。
今回の事態は、医療物資の安定供給体制の重要性を改めて浮き彫りにしました。厚生労働省では今後、備蓄物資の適切な循環と更新、さらには国内生産基盤の強化に向けた支援策の拡充を検討していく方針です。医療現場の安全確保と診療継続のため、官民一体となった取り組みが求められています。
