川崎重工業が造船業界における深刻な技術者不足を解決するため、四足歩行型のAI造船ロボットの開発に乗り出すことが18日、明らかになりました。同社は特に溶接技術者の確保が困難になっている現状を受け、船舶建造工程の自動化を加速させる方針です。
国土交通省の統計によると、造船業界の溶接技術者数は過去10年間で約30%減少しており、特に熟練技術者の高齢化と後継者不足が深刻化しています。業界全体では現在約2万人の溶接技術者が従事していますが、このままのペースで減少が続けば、2030年代には現在の半数程度まで減少するとみられています。
開発予定のAI造船ロボットは、四足歩行機構により船舶内部の狭い空間や傾斜のある場所での作業が可能とされています。AIシステムには画像認識技術と溶接パターン学習機能を搭載し、熟練技術者の技術を再現できる設計となる予定です。川崎重工は2027年度中にプロトタイプの完成を目指しており、開発費用は推計で数十億円規模とみられます。
造船業界では近年、韓国や中国との競争激化により効率化が求められており、各社が自動化技術の導入を進めています。三菱重工業や今治造船なども溶接ロボットの導入を拡大していますが、従来の固定式ロボットでは対応できない複雑な船体構造への対応が課題となっていました。
四足歩行型ロボットの技術は、これまで主に軍事・警備分野や災害対応で活用されてきましたが、製造業への本格導入は珍しいケースです。川崎重工は航空宇宙分野で培ったロボット技術と、造船事業での豊富な経験を組み合わせることで、実用性の高いシステム開発が可能としています。
業界関係者によると、AI造船ロボットが実用化されれば、24時間連続作業や高精度な溶接品質の確保が期待される一方、初期導入コストや既存作業員との協調作業などの課題も指摘されています。また、安全性の確保や品質保証体制の構築も重要な検討事項となります。
川崎重工は今回のAI造船ロボット開発を通じて、2030年代には造船工程の約50%を自動化することを目標に掲げています。成功すれば他の造船会社への技術提供も視野に入れており、日本の造船業界全体の競争力向上に寄与する可能性があります。同社は今後、造船以外の重工業分野への応用展開も検討していく方針です。
