三井化学は13日、製造現場で発生したヒヤリハット事例をAIに学習させた安全管理システムの運用により、労働災害の発生件数を従来比6割削減したと発表しました。同システムは2024年4月から段階的に導入を開始し、全国の主要製造拠点で本格運用されています。
このAIシステムは、過去10年間に蓄積された約5万件のヒヤリハット報告書をデータベース化し、機械学習技術を活用して危険予兆のパターンを解析します。作業員の行動や設備の稼働状況をリアルタイムで監視し、事故につながる可能性の高い状況を検知すると、即座に警告を発する仕組みとなっています。
導入効果について、同社では2025年度の労働災害発生件数が前年度比で約60%減少したと報告しています。特に、化学物質の取り扱いに関連する事故や、設備メンテナンス作業中の事故において顕著な改善が見られたとのことです。また、ニアミス事例の早期発見により、重大事故の未然防止にも寄与しているとみられます。
化学業界では、製造プロセスの複雑化や作業環境の多様化により、労働安全の確保が重要課題となっています。厚生労働省の統計によると、化学工業における労働災害発生率は他業種と比較して依然として高い水準にあり、AI技術を活用した予防的な安全対策への期待が高まっていました。
同社では今回の成果を受け、AIシステムのさらなる高度化を進める方針です。今後は音声認識技術や画像解析技術も組み合わせることで、より幅広い危険要因の検知が可能になると期待されます。また、協力会社や関連企業への技術提供も検討しており、化学業界全体での安全水準向上に貢献したい考えです。
製造業におけるAI活用による安全管理は、今後さらに進展すると予想されます。人手不足が深刻化する中、AIによる24時間体制の安全監視は、労働者の安全確保と生産性向上の両立を実現する重要な技術として、他業界への波及効果も期待されています。
