議員立法「内密出産法案」が国会に提出、匿名出産の法的整備へ
超党派の国会議員が「内密出産法案」を議員立法として提出しました。妊娠や出産に関する困難な状況にある女性を支援する法的枠組みの整備を目指します。
超党派の国会議員グループが20日、妊娠や出産に困難を抱える女性を支援するための「内密出産法案」を議員立法として国会に提出しました。この法案は、母親が身元を明かさずに安全な医療環境で出産できる制度の法的根拠を整備することを目的としています。
内密出産は、望まない妊娠や様々な事情により出産を秘匿したい女性が、医療機関で匿名のまま出産できる制度です。現在、熊本市の慈恵病院が独自に実施していますが、法的な位置づけが不明確で、出生届の取り扱いなどに課題が指摘されていました。厚生労働省の統計によると、2019年から2024年までの5年間で、同病院では推計20件程度の内密出産が行われたとみられています。
提出された法案では、内密出産を実施できる医療機関の指定要件や、母親の身元情報の管理方法、子どもの出生登録手続きなどを明文化しています。また、母親が後に身元を明かすことを希望した場合の手続きや、子どもが成人後に出自を知る権利についても規定が盛り込まれています。法案では、内密出産の実施機関は都道府県知事の指定を受けることとし、24時間体制での相談対応や適切な医療提供体制の確保を義務付けています。
この制度をめぐっては、子どもの出自を知る権利との兼ね合いや、戸籍制度との整合性について専門家の間でも議論が分かれています。一方で、妊娠や出産に関する相談件数は年間約3万件に上るとされ、そのうち一定数は深刻な困窮状況にあると推計されています。児童相談所への相談件数も増加傾向にあり、予防的な支援策の必要性が高まっています。
ヨーロッパでは、ドイツやフランスなど複数の国で内密出産に類する制度が法制化されており、年間数百件から数千件の利用実績があるとされています。日本においても、子どもの遺棄や虐待の防止、母親の生命と健康の保護といった観点から、法的整備を求める声が関係者から上がっていました。
法案の審議は今後、所管の厚生労働委員会で行われる見通しです。与野党間での合意形成が課題となる一方、子どもと母親の双方を守る制度設計について、慎重な議論が求められます。法案が成立した場合、施行は公布から2年以内とされており、実施機関の整備や関係者への研修体制の構築が急務となる見込みです。
