住友商事は26日、全社員約5000人を対象としたAI(人工知能)スキルの等級制度を新たに導入すると発表しました。社員のAI活用能力を数段階に分けて評価し、今後の人事配置や昇進の判断材料としても活用する方針です。大手総合商社がこうした包括的なAIスキル評価制度を導入するのは初めてとみられます。
新制度では、基礎的なAI知識の理解から、生成AIツールの実務活用、AI戦略の企画立案まで、スキルレベルを5段階程度に分類する予定です。評価は年1回実施し、筆記試験と実技試験を組み合わせて行います。また、社員の現在のスキルレベルに応じて、段階的な研修プログラムも用意する計画です。
背景には、生成AIの急速な普及があります。ChatGPTをはじめとする生成AIサービスが2022年後半から爆発的に広がり、ビジネス現場での活用が急務となっています。経済産業省の推計によると、日本では2030年までに最大79万人のAI人材が不足するとされており、企業による人材育成の取り組みが加速しています。
住友商事では既に一部の部署でAIツールの試験導入を進めており、業務効率化や新たなビジネス創出につながる事例が報告されているとのことです。同社は今回の制度導入により、全社的なAI活用レベルの底上げを図るとともに、デジタル変革を推進する狙いがあります。
他の大手企業でも類似の動きが見られます。金融業界では三井住友銀行が行員向けのAI研修を強化し、製造業でもトヨタ自動車が技術者のAIスキル向上プログラムを拡充しています。人材サービス各社によると、AI関連のスキル研修への企業からの問い合わせは前年同期比で3倍以上に増加しているとのデータもあります。
一方で、AIスキルの評価基準の標準化や、急速な技術進歩に対応した継続的な教育システムの構築など、課題も指摘されています。業界関係者は、個社の取り組みだけでなく、業界横断的な人材育成の仕組み作りが重要になると分析しています。
住友商事の新制度は2026年度内の本格運用開始を予定しており、他の商社や大手企業の類似制度導入に影響を与える可能性があります。企業のAI人材育成競争が本格化する中、従業員のスキル向上と企業競争力強化の両立が今後の重要な経営課題となりそうです。
