米国政府は5月31日、中国企業の海外子会社を経由したAI半導体の調達ルートを遮断する新たな輸出規制強化策を発表しました。これまでの規制では、中国本土の企業への直接輸出は制限されていましたが、第三国に設立された子会社を通じた迂回調達については十分な対策が取られていませんでした。
新規制では、中国企業が25%以上の株式を保有する海外子会社についても、親会社と同等の規制対象として扱われることになります。また、シンガポールや香港などの金融ハブを拠点とする関連企業についても、実質的な支配関係が認められる場合は規制の対象となるとみられます。
この措置は、生成AIや機械学習に使用される高性能半導体チップの対中流出を防ぐことが目的です。特に、エヌビディアのA100やH100といった最先端のGPUチップが、中国の軍事・監視技術開発に転用されることを懸念しての対応とされています。業界関係者によると、これまで一部の中国企業は東南アジアやカリブ海諸国に子会社を設立し、こうした規制を回避してきた経緯があります。
今回の規制強化により、米国の半導体メーカーは輸出先企業の株主構成や実質支配者について、より詳細な調査が求められることになります。商務省産業安全保障局は、違反企業に対しては最大で年間売上高の2%、または100万ドルのいずれか高い方の制裁金を科すことができるとしています。
中国側は、この措置について「自由貿易の原則に反する一方的な制裁」として強く反発する姿勢を示しています。中国商務部は声明で、「技術覇権主義に基づく不当な措置」として批判し、対抗措置を検討する可能性を示唆しました。
半導体業界への影響も懸念されています。アナリストは、規制対象の拡大により米国企業の売上が減少する可能性があると指摘しており、特にアジア市場への依存度が高い企業にとっては収益への打撃となる可能性があります。一方で、国内生産への回帰や同盟国との連携強化が進むとの見方もあります。
今後、米中間の技術覇権争いはさらに激化するとみられ、AIや半導体分野での分離がより鮮明になる可能性が高まっています。日本や韓国、台湾といった同盟国との協力体制の構築が、米国の対中戦略における重要な要素となりそうです。
