名古屋地方裁判所は6月4日、AI(人工知能)技術を使って児童の写真を性的に加工した画像について、児童買春・児童ポルノ禁止法違反に該当するとの判断を示しました。AIによる画像加工技術を用いた児童ポルノ事件で裁判所が有罪判決を下すのは全国初とみられます。
判決によると、被告は生成AI技術を使用して、一般的な児童の写真を性的な内容に加工し、これを所持していた罪に問われていました。弁護側は「実際の児童を撮影したものではなく、デジタル加工されたもので実害がない」と主張していましたが、裁判所はこの主張を退けました。
裁判長は判決理由で「元となった児童の人格や尊厳を著しく害するものであり、実際に撮影された児童ポルノと同等の違法性がある」と指摘しました。また「AI技術の発達により、より精巧な加工が可能になっていることを踏まえれば、社会的な害悪性は従来の児童ポルノと変わらない」との見解を示しました。
近年、生成AI技術の普及により、実在する人物の顔写真を使って性的な画像を作成する「ディープフェイクポルノ」と呼ばれる問題が世界的に深刻化しています。特に、SNSなどから入手した児童の写真を悪用するケースが増加傾向にあると報告されており、法執行機関や専門家の間で対策の必要性が議論されています。
国内では、AI技術を悪用した画像生成に関する法的整備が課題となっていました。現行の児童買春・児童ポルノ禁止法は、実際に撮影された画像を対象として制定されており、AI生成画像への適用については司法判断が分かれる可能性が指摘されていました。
法務省の統計によると、2025年の児童ポルノ事件の検挙件数は前年比で増加傾向にあり、このうちデジタル技術を悪用したとみられる事件も一定の割合を占めているとされています。警察庁も昨年から、AI生成画像を含むデジタル性犯罪への対策強化を進めています。
今回の判決は、全国の同種事件の判断に大きな影響を与える可能性があります。法曹関係者は、AI技術の悪用防止と表現の自由のバランスを取りながら、さらなる法整備の検討が必要との見方を示しており、今後の立法府の動向が注目されます。また、AI技術を提供する企業側にも、悪用防止のための技術的対策の強化が一層求められることになりそうです。
