健康シニア増加で医療費比率改善も窓口負担改革は遅れ
健康な高齢者の増加により、現役世代に対する医療費の比率が5倍から4倍に改善したことが分かりました。一方で、窓口負担増などの制度改革は想定より遅れています。
健康な高齢者の増加により、現役世代と比較した高齢者の医療費比率が改善していることが明らかになりました。従来は現役世代の5倍とされていた高齢者の医療費が、近年では4倍程度まで縮小したとみられます。健康寿命の延伸や予防医療の普及が背景にあるものの、窓口負担増などの制度改革は当初の想定より遅れている状況です。
厚生労働省の統計によると、65歳以上の高齢者の医療費は年間約45兆円規模で推移している一方、要介護認定を受けていない元気な高齢者の割合は約82%まで上昇したとの報道があります。特に75歳以上の後期高齢者においても、定期的な運動習慣を持つ人の割合が10年前と比べて約15ポイント増加したとされています。
この背景には、全国の自治体が推進する健康づくり事業の効果があるとみられます。特定健診の受診率は全国平均で約58%まで向上し、メタボリックシンドロームの該当者・予備群の割合も減少傾向にあります。また、フレイル(虚弱)予防の取り組みが各地で展開され、高齢者の身体機能維持に一定の成果を上げているとの分析もあります。
一方で、医療制度の持続可能性を確保するための改革は想定より遅れています。75歳以上の窓口負担を1割から2割に引き上げる制度改正は2022年から段階的に実施されていますが、対象となるのは年収200万円以上の人に限定されており、全体に占める割合は約20%にとどまっています。
医療費の地域格差も課題として浮上しています。1人当たり医療費が最も高い地域と低い地域では約1.5倍の開きがあり、生活習慣病の予防対策や医療提供体制の効率化において地域間の取り組みに差が生じているとの指摘があります。
専門家は、高齢者の医療費比率改善は喜ばしい傾向である一方、2025年には団塊世代がすべて75歳以上となるため、制度改革の議論を加速させる必要があると指摘しています。現在検討されている改革案には、かかりつけ医制度の強化や、予防医療への取り組みに応じたインセンティブ制度の拡充などが含まれています。
今後は健康な高齢者をさらに増やすための施策と並行して、医療費の適正化に向けた制度設計が重要な課題となります。デジタル技術を活用した健康管理システムの普及や、地域包括ケアシステムの充実により、持続可能な医療制度の構築が求められています。政府は年内にも次期医療制度改革の基本方針を示す予定で、窓口負担のあり方についても改めて検討が行われる見通しです。
