選挙SNS対策法案、衆院委で可決 罰則なし・事業者任せの実効性に懸念の声
選挙期間中のSNSにおける偽情報・誹謗中傷対策を目的とした法案が衆議院委員会で可決された。ただし罰則規定を持たず、プラットフォーム事業者の自主対応に委ねる構造に、実効性を疑問視する意見が広がっている。
選挙期間中のSNS上における虚偽情報の拡散や候補者への誹謗中傷を規制することを目的とした「選挙SNS対策法案」が、2026年6月25日、衆議院の関連委員会で賛成多数により可決されました。法案は今後、衆議院本会議での採決を経て参議院へ送付される見通しで、今国会での成立を目指した動きが加速しています。
法案の骨子は、選挙運動期間中にXやInstagram、TikTokなどの主要SNSプラットフォームに対し、候補者に関する虚偽情報や選挙妨害にあたる投稿を迅速に削除・ラベル表示するよう「努力義務」を課すものです。対象となるプラットフォームは月間国内利用者数が一定規模(報道ベースでは100万人以上とみられる)を超えるサービスとされており、具体的な基準は政令で定めるとされています。
最大の論点となっているのが、法案に罰則規定が設けられていない点です。プラットフォーム事業者が削除義務を履行しなかった場合でも、現行案では行政指導にとどまる仕組みとなっており、野党側からは「事業者任せでは実効性が担保できない」「有権者を守る本気度が見えない」との批判が相次いでいます。委員会審議でも複数の委員がこの点を追及しましたが、政府側は「表現の自由との兼ね合いを慎重に考慮した結果」との立場を維持しました。
背景には、近年の国政選挙・地方選挙において、SNSを通じた組織的な情報操作や候補者への虚偽情報拡散が社会問題化してきた経緯があります。2025年の参議院選挙では、複数の候補者に関する根拠不明の情報がSNS上で急速に拡散し、選挙管理委員会や警察当局が対応に追われたと伝えられています。こうした事態を受け、超党派の議員連盟がSNS規制の必要性を訴え、今回の法案提出に至りました。
高市早苗首相が率いる現政権にとっても、SNSと政治の関係は対岸の火事ではありません。高市首相自身がSNS上で激しい批判にさらされることも多く、政権としても対策強化の必要性は認識しているとみられます。一方で、規制の範囲や基準の設定をめぐっては、「政権に批判的な言論を封じるために利用されかねない」との懸念も一部の市民団体や報道機関から示されており、法案の内容と運用の透明性確保が引き続き問われる状況です。
EUでは2024年に施行されたDSA(デジタルサービス法)のもと、大手プラットフォームに対して選挙期間中の情報操作リスク評価と対策報告を義務付け、違反には全世界売上高の最大6%に相当する制裁金を科す厳格な枠組みが整備されています。こうした海外事例と比較した場合、今回の日本の法案は規制水準として見劣りするとの指摘も専門家の間から出ています。
法案は今後、本会議での採決・参議院審議を経て、早ければ今国会(会期末は2026年7月中旬とみられる)中に成立する可能性があります。ただし、罰則規定の追加や第三者機関による監視体制の整備を求める意見は与野党双方に存在しており、参議院審議の過程で法案内容が修正される可能性も否定できません。SNS時代の選挙の公正性をいかに守るか、議論の行方が注目されます。
