AI半導体「脱エヌビディア」の兆し アジア勢の動きが活発化
AI向け半導体市場でエヌビディア一強の構図に変化の兆しが見られており、アジアの半導体各社による独自チップ開発や供給網の多様化が進んでいます。
AI(人工知能)向け半導体市場において、長らく圧倒的な存在感を示してきたエヌビディアの一強体制に変化の兆しが見られています。業界関係者の間では「もはやAI=エヌビディアではない」との見方が広がりつつあり、アジアを中心とした半導体メーカー各社の動向が改めて注目を集めています。
背景にあるのは、生成AIの学習・推論に用いる半導体の需要が急拡大する中で、大手クラウド事業者が独自チップの開発を加速させている点です。米グーグルの「TPU」、米アマゾン・ウェブ・サービスの「Trainium」など、自社設計のカスタムASIC(特定用途向け集積回路)が実用段階に入り、エヌビディア製GPU(画像処理半導体)への依存度を下げる動きが進んでいるとみられます。市場調査会社の推計では、AI向け半導体市場に占めるエヌビディアのシェアは依然として高水準にあるものの、ピーク時と比べて低下傾向にあると報じられています。
こうした流れの中で、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとするアジアの製造受託企業が果たす役割はさらに大きくなっています。エヌビディアのGPUだけでなく、グーグルやアマゾンのカスタムチップ、さらには米AMDや米ブロードコムが手掛ける半導体の製造も担っており、特定企業への集中リスクを分散させる供給網の要としての位置づけが強まっているといえます。韓国のサムスン電子やSKハイニックスも、AI向けの高帯域幅メモリー(HBM)分野で存在感を高めており、アジア勢全体としての重要性が増しています。
エヌビディア自身も次世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」シリーズの供給拡大を進めており、依然として最先端AI半導体分野での競争優位を保っているとされます。一方で、AMDが投入する「MI300」シリーズなど競合製品の性能向上も指摘されており、価格競争力や供給の安定性を重視する顧客企業が調達先を分散させる傾向が強まっているとの見方もあります。
背景には、AI関連の設備投資(設備投資額)が世界的に高水準で推移していることも挙げられます。国内証券会社のアナリストが指摘するように、機械受注統計などのマクロ経済指標からAI・半導体分野の投資動向を読み解く動きも活発化しており、企業の設備投資計画がAI半導体市場全体の需給バランスに影響を与える構図が続いていると考えられます。
今後については、クラウド大手各社が自社設計チップへの投資をさらに拡大する可能性がある一方で、エヌビディアも新製品投入やソフトウェア面での囲い込み戦略を強化するとみられます。アジアの半導体製造企業にとっては、複数の顧客からの受注を確保できる好機である半面、地政学リスクや米中間の技術規制の動向にも左右されやすい状況が続くと予想されます。市場全体としては、特定企業への集中から多極化へと向かう転換期にあるとの見方が、業界関係者の間で広がりつつあります。
