全国的に深刻化しているシカやイノシシ、サルなどによる農作物被害を受け、AI技術を活用した鳥獣害対策と、教育機関との連携強化を求める論説が示されました。近年、被害額は年間150億円台で推移しているとみられ、農村地域の高齢化や担い手不足も相まって、対策の担い手そのものが減少している状況が指摘されています。
農林水産省が公表している統計によれば、鳥獣被害による農作物被害額は令和4年度時点で約156億円と推計されており、このうちシカによる被害が最も大きな割合を占めているとみられます。被害は営農意欲の減退にもつながり、耕作放棄地の増加という悪循環を招いている地域も報道ベースで確認されています。
こうした状況の中で注目されているのが、AIカメラやセンサーを活用した鳥獣検知システムです。従来は自治体職員や猟友会関係者が現地を巡回して被害状況を確認していましたが、AI画像解析技術を用いることで、出没パターンの分析や個体数の推定が効率化できるとされています。一部の自治体では既にAIカメラを設置し、リアルタイムで動物の出没を検知する取り組みが進められているとみられます。
論説では、こうしたAI技術の導入に加え、教育機関との連携強化が今後の課題として挙げられています。具体的には、大学や専門学校の研究機関が持つデータ解析能力やAI開発力を、現場の鳥獣害対策に活用する仕組みづくりが求められているとされます。従来、鳥獣害対策は農業関係者や猟友会が主体となって進められてきましたが、専門的な技術支援が不足しているとの指摘が業界関係者から出ているようです。
背景には、猟友会員の高齢化と減少という構造的な問題があります。全国の狩猟免許所持者数は減少傾向が続いているとみられ、捕獲の担い手不足が被害拡大の一因になっているとの見方も出ています。この状況を受け、AI技術を用いた省力化と、教育機関の専門知識を組み合わせることで、限られた人材でも効果的な対策が可能になるという期待が寄せられています。
また、教育機関との連携は人材育成の側面も期待されています。専門実践教育訓練の指定講座など、社会人向けの学び直し制度を活用し、AI技術や鳥獣害対策に関する専門知識を持つ人材を育成する動きも今後広がる可能性があります。地域の農業高校や農業大学校がAI技術を取り入れた実践的なカリキュラムを導入することで、若い世代が鳥獣害対策の担い手として関わる契機になるとも考えられています。
今後は、AI技術の精度向上とコスト低減が進むことで、中小規模の自治体や個人農家でも導入しやすい環境が整っていくことが見込まれます。同時に、教育機関との連携が制度的にどこまで進むかが、対策の実効性を左右する重要な要素になるとみられます。地域資源としての人材育成と技術活用の両輪が、今後の鳥獣害対策の方向性を決める鍵になりそうです。
