政府、AIでサイバー攻撃元を無害化する新方針を検討
政府はAIを活用し、サイバー攻撃の発信元に直接アクセスして無害化する防御体系の整備を進めています。能動的サイバー防御の実効性強化が狙いです。
政府はサイバー攻撃への対応強化に向け、人工知能(AI)を活用して攻撃の発信元に直接アクセスし、無害化する仕組みの整備を進めていることが8日、共同通信の報道で明らかになりました。従来の防御中心の対策から一歩進み、攻撃元への能動的な対処を可能にする体制構築が本格化しているとみられます。
背景には、2025年に成立した能動的サイバー防御に関する法整備があります。この法律は、重要インフラなどへの攻撃が予見される場合に、政府が攻撃元の通信情報を検知し、必要に応じて対処できる権限を定めたもので、2027年までに段階的に全面施行される見通しとなっています。今回報じられたAI活用は、この法的枠組みの実務面を支える技術基盤の一つと位置付けられているとみられます。
具体的には、AIが日々発生する大量のサイバー攻撃通信を自動的に分析し、攻撃パターンや発信元を高速に特定する役割を担うとされます。国内へのサイバー攻撃関連の相談件数は近年増加傾向にあり、警察庁の集計では年間数万件規模に達しているとみられ、人力での監視・対応には限界があるとの指摘が業界関係者から出ています。AIによる自動検知・分析は、こうした対応の遅れを縮小する狙いがあるとみられます。
一方で、攻撃元への「アクセスして無害化する」という手法には、法的・技術的な課題も指摘されています。攻撃元が海外に存在する場合、国際法上の主権侵害に該当する可能性があるとの懸念が専門家から示されており、政府は運用にあたって関係国との調整や国内法上の統制手続きを慎重に検討しているもようです。また、AIの判断による誤検知が意図しない第三者のシステムへ影響を及ぼすリスクについても、業界関係者から懸念の声が上がっています。
サイバー攻撃を巡る国際情勢は緊迫化しており、国家を背景とした攻撃グループによる重要インフラへの侵入が各国で相次いで報告されています。日本国内でも官公庁や企業を標的とした攻撃が報告されており、今回のAI活用方針は、こうした脅威の高度化に対応するための施策の一環と受け止められています。
政府は今後、AIを活用した検知・対処システムの実証と法運用の整備を並行して進める方針とみられます。実効性のある防御体制の構築には、技術面の精度向上に加え、国際的な合意形成や国内の監督体制の透明性確保が課題になりそうです。今後の制度運用の詳細や実施状況について、続報が注目されます。
