政府、サイバー防御にAI活用検討 攻撃元無害化へ新技術導入
政府がサイバー攻撃対策として、攻撃元へのアクセスや無害化措置にAI技術を活用する方針を検討していることが分かりました。能動的サイバー防御の実効性向上が狙いとみられます。
政府がサイバー攻撃への対処能力を高めるため、AI(人工知能)技術を活用する方針を検討していることが、共同通信の報道で明らかになりました。攻撃元のサーバーなどにアクセスし、被害の拡大を防ぐための無害化措置において、AIによる分析や判断支援を組み込む狙いがあるとみられます。
背景には、2025年に成立した能動的サイバー防御に関する法制度があります。この法律は、重要インフラや政府機関を標的とした攻撃が発生した際、被害が生じる前に攻撃元のサーバーへアクセスし、無害化措置を講じることを可能にするものです。従来の日本のサイバーセキュリティ対策は、攻撃を受けた後の防御や復旧が中心でしたが、能動的な対応へと方針が転換されてきています。
AIの活用が検討される理由として、サイバー攻撃の高度化・巧妙化が急速に進んでいることが挙げられます。攻撃者側もAIを用いて攻撃手法を自動化・最適化する動きがあるとされ、防御側の対応スピードも人手だけでは追いつきにくくなっているとの指摘が専門家の間で出ています。攻撃の兆候を早期に検知し、無害化の判断を迅速に行うためには、AIによる大量のログ解析やパターン認識が有効との見方があります。
政府内では、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を中心に体制整備が進められてきたとみられます。2025年の法整備以降、実際の運用に向けた技術的な検証や、人員体制の拡充が課題とされてきました。AI活用の検討も、こうした運用面での実効性を高める一環と位置づけられます。
一方で、攻撃元への「アクセス」や「無害化」という措置は、他国のサーバーや通信インフラに関わる可能性もあり、国際法や主権との関係で慎重な運用が求められるとの指摘もあります。AIによる判断が誤って民間の無関係なシステムに影響を及ぼすリスクについても、専門家からは慎重な検証が必要との声が上がっています。
国内のサイバー攻撃件数は近年増加傾向にあるとされ、警察庁などの発表でも、企業や自治体を狙った攻撃の報告件数は高い水準で推移しているとみられます。特に医療機関や重要インフラを狙ったランサムウェア被害は社会的な影響が大きく、こうした攻撃への迅速な対応が急務とされてきました。
今後、政府はAI技術の具体的な導入範囲や運用ルールについて、さらなる検討を進めるとみられます。技術的な実証や法的な整備、国際的な連携のあり方も含め、実際の運用開始までには一定の時間を要する可能性があります。サイバー防御の高度化が進む一方で、透明性や説明責任をどう確保するかも、今後の重要な論点になりそうです。
