国内の公募文学賞において、生成AIを活用して執筆されたとみられる小説作品の応募が増加していることが分かりました。出版業界の関係者によると、一部の新人賞では応募総数のうちAI生成が疑われる作品の割合が数%から一割程度に達しているとみられ、選考現場に新たな負担が生じています。
背景には、文章生成AIの性能向上があります。数年前まではAIが生成した長編小説には不自然な展開や矛盾が目立ちましたが、現在は数万字規模の長編でも一定の完成度を保てるようになったとされています。これにより、応募者が下書きや文体の補助としてAIを利用するケースだけでなく、大部分をAIに生成させたとみられる作品も紛れ込むようになったと報じられています。
こうした状況を受け、複数の公募新人賞ではAI生成物の取り扱いについてガイドラインの整備を進めていると報じられています。応募規定にAI使用の有無を申告させる欄を新設した賞や、一定割合以上をAIが生成したと判断される作品を選考対象外とする規定を設けた賞もあるとされます。ただし、AI生成かどうかを客観的に判定する技術的な決め手はまだ確立されておらず、判定作業の多くは選考委員の経験や勘に頼らざるを得ないのが実情のようです。
選考コストの増加も業界関係者の間で懸念されています。一次選考の担当者が読む応募作品数自体が増える傾向にあるうえ、AI生成が疑われる作品については通常より慎重な確認作業が必要になるため、一件あたりの選考時間が延びているとみられます。中小規模の出版社や文芸誌が主催する新人賞では、選考にかかる人件費や事務コストの負担が重くなり、賞の存続自体を見直す動きも一部で出ているとの指摘があります。
一方で、AIを創作の補助ツールとして活用すること自体を一律に排除すべきではないという意見も業界内には存在します。誤字脱字のチェックやプロットの整理にAIを使う書き手は既に少なくないとされ、どこまでを「AI生成」とみなすかの線引きは難しい課題として残っています。文学賞ごとに基準が異なる状況が続けば、応募者側にも混乱が生じる可能性が指摘されています。
海外でも同様の課題が報告されており、電子書籍のセルフパブリッシング市場ではAI生成とみられる作品の急増により、プラットフォーム側が投稿数の制限や申告義務化に踏み切った事例も報道ベースで伝えられています。国内の公募文学賞がこうした海外の対応を参考にする動きも今後強まるとみられます。
今後は、AI生成物を検出する技術的な仕組みの精度向上とあわせて、業界団体による統一的なガイドライン策定が課題になるとみられます。選考コストの増大が続けば、体力のない新人賞の縮小や休止といった事態も現実味を帯びる可能性があり、文学賞という制度そのものの在り方が問い直される局面を迎えているといえそうです。
