法務省、AIリーガルテック新指針 非弁行為の線引き明確化
法務省はAIを活用した法律サービスの提供に関する新指針を示し、弁護士法が禁じる非弁行為との境界を明確化しました。業界からは投資拡大への期待が高まっています。
法務省は、AIを活用したリーガルテック分野の事業展開を後押しするため、弁護士法が定める非弁行為との線引きを明確化する新たな指針を示しました。契約書のAIレビューサービスや、AIチャットボットによる法律相談支援など、近年急速に普及しているサービスについて、どこまでが適法な範囲かを整理した内容となっています。
弁護士法72条は、弁護士資格を持たない者が報酬を得て法律事務を取り扱うことを禁じており、これまでAIを用いたサービスがこの規定に抵触するかどうかは、事業者側にとって不透明な部分が多いとされてきました。実際に、契約書の自動レビューツールや法律文書の作成支援AIをめぐっては、サービス提供者が「非弁行為に当たるのではないか」との懸念から事業拡大を慎重に進めるケースがあったと業界関係者は指摘しています。
今回の指針では、AIが提供する情報が一般的な法令解説にとどまる場合と、個別具体的な法律判断に踏み込む場合とを区別し、後者については弁護士の関与が必要であるとの考え方が示されました。一方で、契約書のリスク箇所を機械的に抽出するようなサービスについては、非弁行為に該当しない可能性があるとの見解も盛り込まれており、事業者にとって一定の予見可能性が高まる内容とみられています。
国内のリーガルテック市場は、生成AIの普及を背景にここ数年で拡大を続けており、契約審査や法務相談の効率化を目的としたサービスを導入する企業が増加しているとされています。市場調査によれば、国内のリーガルテック関連市場は今後数年で数百億円規模に達するとの推計もあり、法的な位置づけの明確化は投資判断を後押しする材料になると期待されています。
一方で、AIが誤った法律判断を提示するリスクや、利用者がAIの回答を専門家の助言と誤認する可能性も指摘されており、指針では利用者への注意喚起の徹底や、AIの回答が法的助言ではない旨を明示する運用上の配慮を求める内容も含まれています。専門家の間では、線引きが明確になったことを歓迎する声がある一方、実際の運用では個別事案ごとの判断が依然として難しいとの意見も出ています。
今後は、指針を踏まえた具体的なガイドラインの整備や、業界団体による自主基準の策定が進むとみられます。リーガルテック企業にとっては事業戦略を見直す好機となる可能性があり、法務省が明確化した線引きが、AIと法律実務の共存に向けた一つの転機になるかどうか、今後の運用状況が注目されます。
