富士通は1日、純国産の先端AI半導体の技術確立を発表した。生産については半導体受託製造会社のラピダスに委託する方向で調整していることが明らかになった。経済安全保障の重要性が高まる中、日本の半導体技術の自立を目指す取り組みとして業界関係者の注目を集めている。
開発されるAI半導体は、機械学習や深層学習に特化した設計となる見込みで、データセンターやクラウドサービス向けの需要を想定している。富士通はこれまでスーパーコンピュータ「富岳」で培った高性能計算技術を活用し、AI処理に最適化されたアーキテクチャの開発を進めてきた。
生産を担うラピダスは、トヨタ自動車やソニーグループなど国内主要企業8社が2022年に設立した次世代半導体の製造会社で、2nm(ナノメートル)プロセスの最先端半導体の量産を目指している。北海道千歳市に建設中の新工場では、2027年の量産開始を計画しており、富士通のAI半導体もこの工場での生産が検討されているとみられる。
世界のAI半導体市場は急速な拡大を続けており、市場調査会社の推計によると2023年の市場規模は約500億ドルに達し、2030年には1500億ドル規模まで成長する可能性が指摘されている。現在はエヌビディアが市場シェアの約80%を占めているが、各国が自国技術による半導体開発を加速させている。
日本政府は半導体を経済安全保障上の重要分野と位置づけ、ラピダスへの支援を含む半導体戦略を推進している。2021年に設立された半導体戦略推進議事会では、2030年代に売上高13兆円以上の半導体産業の実現を目標として掲げており、今回の富士通の取り組みもこの戦略の一環として位置づけられる。
業界関係者は、純国産AI半導体の実現により、サプライチェーンの安定性向上と技術的な独立性の確保が期待できると分析している。一方で、すでに市場で圧倒的な地位を築いている海外製品との競争や、量産化における技術的課題など、商業化に向けては多くのハードルが残されている状況だ。
富士通とラピダスは今後、技術開発のスケジュールや生産体制の詳細について協議を進める予定で、日本の半導体産業復活に向けた重要な試金石となることが予想される。AI技術の普及が加速する中、国産半導体の競争力確保が日本のデジタル戦略の成否を左右する可能性が高まっている。
