選挙のSNS偽情報対策法案が衆院通過、電子メール投票依頼も解禁へ
選挙運動におけるSNS上の偽情報への対応を義務付け、電子メールによる投票依頼を解禁する法案が衆議院を通過した。参院審議を経て今国会での成立を目指す。
選挙運動中にSNS上で拡散される偽情報への対応策を盛り込んだ公職選挙法等改正案(通称「選挙SNS対策法案」)が2026年6月28日、衆議院本会議で可決・通過しました。同法案は、候補者や政党に対してSNS上の虚偽情報への迅速な訂正対応を求める義務規定を新設するとともに、これまで原則禁止とされていた電子メールによる投票依頼を一定の条件のもとで解禁するという、二本柱の改正内容を含んでいます。
現行の公職選挙法では、電子メールを使った投票依頼は政党および候補者本人に限定して認められており、一般有権者による利用は禁止されてきました。今回の改正案では、有権者が支持する候補者への投票を知人らにメールで呼びかけることを新たに認める方向で規定が整備される見通しです。デジタル選挙運動の拡大という観点から、専門家の間では「時代の変化に即した見直し」との評価がある一方、なりすましや迷惑メールとの区別が難しいとして、運用上の課題を指摘する声も上がっています。
SNS上の偽情報対策については、近年の国政選挙・地方選挙において、候補者に関する根拠のない情報がX(旧Twitter)やInstagramなどで急速に拡散し、選挙結果に影響を与えかねない事例が相次いで確認されています。総務省の調査(報道ベース)によれば、直近の参院選期間中にSNS上で「偽情報・誤情報」と判定されたコンテンツは数千件規模に上ったとみられており、法的な対応枠組みの整備が急務とされていました。
今回の法案では、プラットフォーム事業者に対して選挙期間中の偽情報通報窓口の設置と、通報を受けた投稿への対応状況の開示を求める努力義務規定も盛り込まれています。ただし、「偽情報」の定義や判定基準については「表現の自由との兼ね合いで線引きが難しい」との慎重論が与野党双方から出ており、施行規則の策定段階でさらなる議論が必要になるとみられます。衆院審議では附帯決議が付され、基準の明確化と第三者機関の関与についての検討が政府に求められました。
法案審議をめぐっては、現在の国会情勢が影響する可能性も指摘されています。野党の一部が全法案審議に応じない方針を打ち出しており、参院での審議日程が圧迫されるとの見方も出ています。与党は今国会の会期内での成立を目指す方針ですが、審議環境の悪化が法案の行方に影響する可能性は否定できない状況です。
法案が成立・施行された場合、次回の国政選挙から新たなルールが適用される見通しです。デジタル空間における選挙の公正性確保は日本だけでなく世界共通の課題となっており、各国の立法動向を参照しながら実効性のある制度設計ができるかが今後の焦点となります。総務省は施行に向けた政令・省令の整備を進めつつ、プラットフォーム事業者や選挙管理委員会との連携体制を構築していく方針とみられます。
