シャオミ「Xring」新チップ、TSMC提携の裏にある脱依存戦略
シャオミが自社設計SoC「Xring O3」の量産をTSMCに委託したことが判明した。米中半導体摩擦下で進む「設計は自社、製造はTSMC」という分業モデルの広がりは、日本の装置・材料メーカーにも影響を及ぼす可能性がある。
中国スマートフォン大手シャオミ(小米)が、自社開発チップ「Xring O3」の量産をTSMC(台湾積体電路製造)に委託していることが、2026年8月24日にロイターの報道で明らかになりました。関係筋2人によると、TSMCは3ナノメートル(nm)プロセス技術を用いてこの新チップを製造する予定です(ロイター, 2026年)。米中の半導体摩擦が続くなか、設計は自社、製造は台湾ファウンドリーという分業モデルが中国大手スマホメーカーにも広がっている実態が浮き彫りになりました。
- シャオミが新SoC「Xring O3」を2026年8月23日のオンライン配信で発表、TSMCの3nmプロセスで製造される見通し
- 出荷目標は20万〜30万台で、次期フラッグシップ折りたたみスマートフォンへの搭載が有力視されている
- シャオミは2021年からの10年間で少なくとも500億元(70億ドル)の投資を計画し、半導体設計人員は3000人規模に拡大した
- クアルコム・メディアテック依存からの脱却を進める一方、最先端プロセスはTSMCに全面依存する構図が続く
「Xring O3」発表の中身
シャオミの工程技術部門副総裁である朱丹氏は、2026年8月23日のオンラインライブ配信で新フラッグシップSoC「Xring O3」の概要を初めて明らかにしました。事情に詳しい関係者によると、同チップはTSMCが3nmプロセス技術で製造を担当し、シャオミの次期フラッグシップ折りたたみスマートフォンに搭載される見通しです。出荷目標は20万〜30万台とされていますが、計画が非公開であるため、詳細は今後の正式発表を待つ必要があります(BigGo, 2026年/Reuters, 2026年)。
技術面では、Xring O3はTSMCの3nmノードを採用したことで、クアルコムとメディアテックの次世代フラッグシップチップより1世代遅れる格好になります。噂される「Snapdragon 8 Elite Gen 6 Pro」や「Dimensity 9600 Pro」は、TSMCのより先進的な2nm「N2」プロセスで製造されると見込まれています。それでもXring O3は4GHzのクロック速度の壁を突破するなど、性能面で意味のある進化を遂げると報じられています(BigGo, 2026年)。
なぜTSMCとの提携が焦点なのか
シャオミはこれまで米クアルコムのSnapdragonを主力としてスマートフォンを展開してきましたが、最先端半導体製造をめぐる米中対立が深まるなかで、高性能SoCの安定調達に不安を抱え、自社設計・ファウンドリー委託というファブレス型のモデルへ舵を切りました。シャオミの決算説明会によると、Xring O1を搭載したスマートフォン・タブレット・スマートウォッチの累計出荷台数は発売以来100万台を超え、うちスマートフォン単体では2025年5月の発売以来約15万台を販売しています(BigGo, 2026年)。
| チップ | メーカー | 製造プロセス | 製造委託先 |
|---|---|---|---|
| Xring O1(2025年) | シャオミ | N3E(3nm系) | TSMC |
| Xring O3(2026年) | シャオミ | 3nm | TSMC |
| Snapdragon 8 Elite Gen 6 Pro(噂) | クアルコム | 2nm(N2) | TSMC |
| Dimensity 9600 Pro(噂) | メディアテック | 2nm(N2) | TSMC |
この提携は、米国の技術・製造装置を利用するTSMCが、中国企業向けの先端半導体製造をどこまで担い続けられるかという論点も浮かび上がらせます。今回のシャオミとTSMCの提携について、両社は製造元や生産技術、出荷目標に関するコメント要請には応じていません(BigGo, 2026年)。
スマホからAI・EVへ広がる自社半導体戦略
シャオミの半導体戦略は、スマートフォン向けSoCにとどまりません。スマートフォン、AI、EVという異なる事業領域を「自社半導体」という共通基盤でつなごうとする動きは、世界第3位のスマートフォンメーカーであるシャオミが、アップル、サムスン電子、ファーウェイに続き独自シリコン開発に本格参入したことを象徴しています(BigGo, 2026年)。
日本の装置・材料メーカーへの波及可能性
クアルコムやメディアテックにとって、シャオミの自社開発の取り組みは緩やかに進行する脅威と見なされています。もっとも、Xring O3の出荷目標である20万〜30万台は、シャオミのスマートフォン全体の出荷量からすればごく一部に過ぎず、両サプライヤーにとって依然として同社は主要顧客であり続けます(BigGo, 2026年)。一方で、設計を自社が握り、製造をTSMCに委ねる分業モデルが世代を重ねるごとに定着すれば、TSMCの先端プロセスへの需要はさらに厚みを増していく可能性があります。TSMCの生産能力拡大や先端プロセス投資が続く限り、同社に装置・材料を供給する日本企業にも、間接的な形で受注機会が波及する構図は今後も注視されるべき論点だと考えられます。
まとめ
シャオミのXring O3は、単なる新型スマホチップの発表にとどまらず、「設計は自社、製造はTSMC」という分業モデルが中国大手スマホメーカーにも本格的に根付きつつあることを示す事例です。500億元規模の長期投資計画や3000人規模の設計人員という数字は、シャオミがこの戦略を一過性の取り組みではなく、中長期の事業基盤として位置づけていることを裏付けています。私は、今回の提携が米中対立下でも「制裁に抵触しない民生用途であれば商業合理性が優先される」というTSMCの一貫した姿勢を改めて示した点に注目しています。同時に、設計内製化が進んでも最先端の製造工程は台湾に一極集中したままであるという構造は変わらず、日本の装置・材料メーカーにとっては、中国メーカーの自社チップ開発ラッシュがTSMCの先端投資需要を下支えする形で、間接的な追い風になり得ると見ています。
参考文献
- 1.ロイター「シャオミがスマホチップ新版、自社開発で調達強化 TSMCが生産へ」(2026年8月24日)
- 2.BigGo「小米が独自チップ『Xring O3』発表、TSMCの3nm採用で折りたたみスマホに搭載へ」(2026年)
- 3.NewsPicks「シャオミがスマホチップ新版、自社開発で調達強化 TSMCが生産へ」(2026年)
- 4.Newsweek日本版「シャオミ、『Xring』新チップ生産でTSMCと提携=関係筋」(2026年8月24日)
- 5.docomo dニュース(ロイター配信)「シャオミ、『Xring』新チップ生産でTSMCと提携=関係筋」(2026年8月24日)
- 6.Yahoo!ニュース(ロイター配信)「シャオミがスマホチップ新版、自社開発で調達強化 TSMCが生産へ」(2026年)
- 7.Investing.com「XiaomiがTSMCと提携し新チップを発表——ロイター報道」(2026年)
- 8.Vietnam.vn「Xiaomi、TSMCと提携し折りたたみ式スマートフォン向けハイエンドチップを製造」(2026年)

