「光電融合」がAI電力危機の切り札に浮上 なぜ今注目されるのか
AI普及に伴うデータセンターの電力消費急増を背景に、光と電気を融合させる「光電融合」技術が次世代インフラの核心として注目を集めている。
生成AIの急速な普及により、世界中のデータセンターが消費する電力量が爆発的に増加している。国際エネルギー機関(IEA)の推計によれば、データセンターの世界全体での電力消費量は2026年時点で年間1,000テラワット時(TWh)を超える水準に達するとみられており、一部の試算では2030年代に向けてさらに倍増する可能性も指摘されている。こうした「AIが招く電力危機」への現実的な対応策として、半導体・通信業界で急速に関心が高まっているのが「光電融合」技術だ。
光電融合とは、これまで電気信号で行っていたデータの転送・処理の一部を光信号に置き換え、光と電気を同一チップや基板上で効率的に組み合わせる技術を指す。電気信号に比べ、光信号は熱の発生が少なく、高速かつ大容量のデータ転送が可能という特性を持つ。現在のAI処理に使われるGPUクラスターでは、チップ間・サーバー間のデータ転送が全体消費電力の大きな比率を占めているとみられており、この部分を光に置き換えることで消費電力を大幅に削減できる可能性があるとされている。
光電融合は新しい概念ではなく、光ファイバー通信の形で長距離通信の分野では広く実用化されてきた。しかし近年は、より短い距離――サーバー間、さらにはチップ内の接続にまで光技術を適用しようとする動きが本格化している。シリコンフォトニクスと呼ばれる技術を用い、既存の半導体製造プロセスと親和性の高い形で光回路を集積する研究開発が、国内外の大手半導体メーカーや研究機関で進んでいる。
日本でも国家プロジェクトとして光電融合技術の開発が推進されており、NTTが中心となって取り組む「IOWN(アイオン)構想」はその代表例だ。従来の電気通信インフラを光を主体とするネットワーク・コンピューティング基盤へと転換することを目標としており、電力効率を現状比で最大100分の1にまで高めることを目指しているとされている。こうした取り組みは国内の通信・半導体産業の競争力強化という観点からも注目されている。
一方で、技術的な課題も少なくない。光と電気を変換する素子の集積化や歩留まりの向上、製造コストの低減などが実用化に向けた主要な障壁とされており、量産段階に至るまでには一定の時間を要するとみられている。また、光信号は電気信号に比べて一部の演算処理に向かない側面もあり、光電融合は「電気の全面置き換え」ではなく、処理の種類や距離に応じて光と電気を最適に使い分けるアプローチが現実的だという見方が業界関係者の間では広がっている。
電力問題はすでにAI投資の足かせになりつつある。米国では大規模データセンターの新設に際して電力確保が困難なケースが相次いでいると報じられており、日本国内でも電力インフラの整備スピードがデータセンター需要に追いつかないとの懸念が出ている。こうした状況を踏まえると、光電融合は単なる性能向上の手段にとどまらず、AI社会を持続可能な形で支えるためのインフラ戦略として位置づけられつつある。
今後の見通しとしては、2020年代後半にかけてシリコンフォトニクスを活用した光インターコネクト製品が大手クラウド事業者向けに段階的に導入され、2030年代に向けて光電融合チップの本格普及が進むとみられている。AIの進化が電力需要をさらに押し上げる中、光電融合技術の開発競争は半導体・通信業界における次の主戦場の一つになりつつある。エネルギー問題とデジタル化の両立という難題に対し、光という古くて新しい技術がどこまで応えられるか、今後の動向が注目される。
