がんゲノム医療拠点、来年度から都道府県ごとに原則1か所指定へ
厚生労働省は、がんゲノム医療の提供体制を強化するため、2027年度から各都道府県に原則1か所の拠点機関を指定する方針を固めました。全国的な医療格差の解消が期待されます。
厚生労働省は、がんゲノム医療を全国に普及させるため、2027年度(来年度)から各都道府県に原則1か所の「がんゲノム医療拠点」を指定する方針を明らかにしました。現行の体制では全国の一部の大規模病院に機能が集中しており、居住地域によって受けられる医療水準に差が生じているとの指摘が続いていました。今回の方針転換は、そうした地域間格差の是正を目的としたものです。
がんゲノム医療とは、患者のがん細胞の遺伝子情報を網羅的に解析し、その結果をもとに最適な治療薬や治療法を選択する、いわゆる「精密医療(プレシジョン・メディシン)」の一形態です。従来の画一的な治療と異なり、個々の患者の遺伝子変異のパターンに応じたオーダーメイド治療が可能となるため、治療効果の向上が期待されています。日本では2019年に保険適用が始まって以降、急速に普及が進んでいます。
現在、国が指定する「がんゲノム医療中核拠点病院」は全国に13か所、「がんゲノム医療拠点病院」は約200か所とされています。しかし地方では検査・相談体制が十分に整備されていない地域も多く、専門的な医療機関への受診のために遠方へ移動を余儀なくされる患者が少なくないとみられています。都道府県単位での拠点指定が実現すれば、47都道府県すべてにアクセス拠点が確保されることになります。
新たな指定要件としては、遺伝子パネル検査の実施能力に加え、検査結果をもとに治療方針を議論する「エキスパートパネル」の設置、および遺伝カウンセリングを行える専門人材の配置などが求められる見通しです。拠点病院には、近隣の医療機関との連携ネットワークの構築も義務付けられる方向で検討が進んでいます。
一方、課題として指摘されているのが専門人材の不足です。がんゲノム医療を担う臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの数は全国的にまだ限られており、拠点の「箱」は整っても人材が追いつかないケースが生じる懸念があります。厚労省は医療従事者の育成・研修プログラムの充実についても並行して議論を進める方針とみられています。
費用面では、がん遺伝子パネル検査は保険適用後も患者の自己負担が生じる場合があり、経済的なアクセス格差も依然として課題となっています。拠点指定と合わせて、検査費用の負担軽減策についても今後の政策議論の焦点になるとみられます。
今後は、厚労省の有識者検討会での議論を経て、指定基準の詳細が固まっていく見通しです。2027年度の本格運用に向けた準備が各都道府県レベルで求められることになり、地域の医療機関や行政がどのように連携体制を構築していくかが、制度の実効性を左右する重要な鍵となりそうです。患者にとってより身近な場所でがんゲノム医療を受けられる環境の整備が、着実に前進することが期待されています。
