博報堂DYグループ、AIが購買を代行する「エージェンティックコマース」統合ソリューションを始動
博報堂DYグループ11社と提携企業が横断組織を構成し、AIエージェントが消費者に代わって購買行動を担う次世代コマース領域の統合ソリューション「Agentic Commerce ONE™」を始動した。
博報堂DYグループは2026年7月、AIエージェントが消費者に代わって商品の検索・比較・購入までを自律的に行う「エージェンティックコマース」領域に特化した統合ソリューション「Agentic Commerce ONE™」を始動したと発表しました。同グループ傘下11社に加え、複数の提携企業が横断的に参加する戦略組織として運営され、広告・マーケティング業界における新たなビジネスモデルの確立を目指します。
エージェンティックコマースとは、生成AIを中核としたAIエージェントが、ユーザーの嗜好や過去の購買履歴、リアルタイムの価格情報などを総合的に判断し、購買行動を代行する仕組みです。従来の「人が検索して、人が選んで、人が購入する」という消費プロセスが大きく変容しつつあり、業界関係者の間では「次の5年でEコマースの構造が根本から変わる」との見方が広がっています。
「Agentic Commerce ONE™」では、AIエージェントが購買の意思決定者となる環境を見据え、ブランドや商品情報をAIエージェントに「正確に認識・選択してもらう」ための最適化施策を企業向けに提供します。具体的には、商品データの構造化・最適化、AIエージェントとの接点設計、購買導線の構築などを一気通貫で支援する体制を整えているとされます。従来のSEO(検索エンジン最適化)になぞらえ、業界では「AEO(AIエージェント最適化)」と呼ばれる概念が注目を集めつつあります。
グループ11社が横断して参画する体制は、博報堂DYグループとして異例の規模とされます。広告制作・メディアプランニング・データ分析・システム開発など、異なる専門性を持つ各社が一体となることで、クライアント企業に対してエージェンティックコマース対応を総合的にサポートできる点が強みとして挙げられています。国内の広告大手がこの領域で本格的な組織横断体制を組んだのは初めてとみられます。
背景には、生成AIの急速な普及があります。2025年以降、米OpenAIやGoogleなどが相次いでAIエージェント機能を一般ユーザー向けに提供し始め、実際にオンラインショッピングをAIに任せるユーザーが世界的に増加しているとされます。国内でも同様の傾向が推計されており、小売業者や消費財メーカーの間では、AIエージェントを通じた購買経路への対応が急務となっています。
一方で、AIエージェントによる購買代行には課題も残ります。個人情報や決済情報の取り扱いに関するセキュリティリスク、AIが誤った判断を下した場合の責任の所在、そして消費者がAIに購買を委ねることへの心理的ハードルなどが指摘されています。業界関係者の間では、技術的な整備と並行して、消費者への啓発や法的フレームワークの整理が不可欠との見方も出ています。
エージェンティックコマース市場は、今後数年で急速に拡大するとみられており、国内外の広告・ITプラットフォーム企業がそれぞれ異なるアプローチで参入を進めています。博報堂DYグループが今回打ち出した大規模な横断組織の始動は、この競争が本格化するタイミングとも重なります。AIが「購買の主体」となる時代に向け、ブランドとAIエージェントの新たな関係性をどう設計するかが、企業マーケティング戦略の中心的テーマになっていくと予想されます。
