三菱自動車、ヒト型ロボット導入へ 製造現場で「フィジカルAI」機運高まる
三菱自動車がヒト型ロボットの導入に向けた検討を進めていることが明らかになった。AIが物理空間で自律的に動作する「フィジカルAI」への関心が国内製造業全体で急速に高まっている。
三菱自動車工業が、製造現場へのヒト型ロボット(ヒューマノイドロボット)導入に向けた取り組みを進めていることが報じられました。同社は国内外の自動車生産ラインにおける人手不足や作業効率化への対応を背景に、AIが人間と同様の動作で現場業務をこなす「フィジカルAI」技術の活用を模索しているとみられます。
「フィジカルAI」とは、大規模言語モデル(LLM)などのAI技術を搭載し、カメラやセンサーで環境を認識しながら物理的な作業を自律的に実行するロボットシステムを指します。従来の産業用ロボットが特定の動作を繰り返す「専用機」であったのに対し、ヒト型ロボットは多様な作業環境に柔軟に対応できる点が最大の特徴です。既存の生産ラインの大規模な改修を必要とせず、人間が作業するために設計された設備にそのまま投入できる可能性がある点も、製造業における注目度を高めています。
国内自動車業界においては、少子高齢化に伴う労働力不足が深刻な課題となっています。製造業全体の就業者数は長期的な減少傾向にあるとされており、特に夜間・交代制勤務が多い自動車部品の組み立て工程や検査工程での人材確保は年々難しくなっているとの指摘があります。こうした背景から、ヒト型ロボットを「24時間稼働できる労働力の補完手段」として位置づける動きが、複数の大手製造業者で加速しつつあります。
ヒト型ロボット市場は世界的にも急成長が見込まれる分野です。米国ではテスラが独自開発するヒューマノイドロボット「Optimus」の生産・外販を計画しているほか、Figure AI、Agility Roboticsなど複数のスタートアップが大手企業との実証実験を進めています。国内でも本田技研工業(ホンダ)が長年にわたる「ASIMO」開発で蓄積した技術を活かした展開を模索するなど、日本の製造業大手が再びこの分野に目を向ける動きが顕著になってきました。
一方、課題も少なくありません。現状のヒト型ロボットは、動作の精度や速度、バッテリー持続時間、導入コストなどの面で実用化に向けた技術的ハードルが残っているとされています。業界関係者の間では、実際の量産ラインへの本格投入には数年単位の実証プロセスが必要との見方も根強く、短期間での大規模導入は現実的ではないとみられています。
また同日は、大成建設とファナックが倉庫向けにAIロボットを活用してスペース効率を従来比2倍に高めるシステムを発表するなど、フィジカルAIの応用は製造業にとどまらず建設・物流分野にも広がりを見せています。AIが「デジタル空間」だけでなく「物理空間」へと進出する潮流は、産業の垣根を越えて加速しているといえます。
三菱自動車のヒト型ロボット導入検討は、日本の製造業がデジタル変革(DX)の次のステップとして「フィジカルAI」に本格的に舵を切り始めたことを象徴する動きといえます。今後、各社の実証実験の結果が積み重なるにつれ、ヒト型ロボットが実際の生産現場でどの程度の役割を担えるかが明らかになっていく見通しです。国内製造業における労働力不足の解消策として、フィジカルAI技術の動向から目が離せない状況が続きそうです。
