国旗損壊罪、参院委で実質審議入り 提出者「愛国心醸成につながる」発言に波紋
国旗損壊罪を新設する法案が参院委員会で実質的な審議に入った。法案提出者が「愛国心の醸成につながる」と述べた発言が議論を呼んでいる。
日本の国旗(日章旗)を故意に損壊した場合に刑事罰を科すことを定める「国旗損壊罪」の創設を盛り込んだ法案が、参議院の委員会で2026年7月10日、実質的な審議に入りました。審議では法案提出者側が「政治抗議の目的であっても、他に手段がない場合には免責の余地がある」との見解を示したほか、「愛国心の醸成につながる」とも発言し、会議室内外で賛否双方から注目を集めています。
現行の刑法には、外国の国旗を損壊した場合を罰する規定(刑法92条)は存在しますが、日本の国旗を損壊する行為を直接罰する条文はありません。今回の法案はこの「空白」を埋めることを目的としており、違反した場合には懲役または罰金を科すことが検討されているとみられます。法案の詳細な量刑については委員会での議論が続いています。
委員会の質疑では、表現の自由との兼ね合いが最大の論点となりました。法案提出者側は「政治的抗議の一環として国旗を損壊した場合であっても、他に抗議の手段が存在しない状況であれば免責される可能性がある」との解釈を示しました。しかし、「他に手段なし」という条件の判断基準が曖昧だとして、野党側や憲法・法律の専門家からは懸念の声が上がっています。
さらに、法案提出者が「この法律は国民の愛国心の醸成につながる」と発言したことも波紋を広げています。この発言に対し、一部の委員から「国家が法律によって特定の感情や心情を国民に植え付けることは、思想・良心の自由に抵触しうる」として撤回を求める声が上がりましたが、提出者側は発言を撤回しませんでした。表現の自由や思想の自由と、国旗保護の必要性をどのように両立させるかという根本的な問いが、議論の核心に据えられた形です。
国旗保護に関する立法は、世界各国で対応が分かれています。アメリカでは連邦最高裁が1989年の判決で国旗損壊を保護される表現の自由と認定しており、ドイツや韓国は一定の条件のもとで国旗損壊罪を設けています。日本においては過去にも同様の立法論議が繰り返されてきた経緯があり、今回の法案もその延長線上に位置づけられます。
今後の審議日程はまだ確定していませんが、今国会会期内に委員会採決が行われるかどうかが焦点となります。与党内でも慎重論がないわけではなく、修正協議が行われる可能性も指摘されています。表現の自由や思想・良心の自由といった憲法上の権利に直結する論点を含むだけに、今後の委員会審議の行方と、最終的に法案がどのような形でまとまるかについて、幅広い関係者が注視しています。
