政府AIアシスタント「源内」に国産言語モデル導入、NTTデータ・富士通など5社が試用開始
政府が運用する行政向けAIアシスタント「源内」に、国産大規模言語モデル(LLM)が試験導入された。NTTデータや富士通など国内主要IT5社が参加し、実務での活用可能性を検証する。
政府が行政業務の効率化を目的に運用しているAIアシスタント「源内」に、国産の大規模言語モデル(LLM)が試験的に導入されたことが明らかになりました。NTTデータ、富士通を含む国内主要IT企業5社が参加するかたちで、2026年7月より試用フェーズが開始されています。これまで「源内」の中核技術には海外製モデルが採用されてきた経緯があり、国産モデルへの切り替えは政府のデジタル戦略における重要な転換点として注目を集めています。
今回の試用には、NTTデータおよび富士通のほか、国産LLM開発に取り組む国内IT企業が加わっているとみられます。各社がそれぞれ開発・提供する言語モデルを「源内」の基盤システムに接続し、行政文書の要約、問い合わせ対応、法令情報の検索といった実務タスクにおける精度や応答速度を評価する予定です。試用期間は数か月にわたる見通しで、その結果をもとに本採用の是非が検討されます。
国産LLMの行政活用が注目される背景には、データ主権とセキュリティへの懸念があります。海外製モデルを利用する場合、入力した行政情報が海外サーバーを経由するリスクが指摘されており、特に個人情報や機密性の高い行政データの取り扱いについては慎重な議論が続いてきました。国産モデルであれば国内のクラウドインフラ上での完結的な運用が可能となり、情報漏えいリスクの低減につながるとされています。
また、日本語処理能力の観点からも国産モデルへの期待は高まっています。行政文書には専門的な法令用語や独特の文体が多く含まれるため、日本語コーパスを重点的に学習したモデルの優位性が発揮されやすい領域とみられています。業界関係者の間では、行政分野での実績が積み上がれば、医療・教育・司法など他の公共分野への展開にも弾みがつくとの見方が広がっています。
一方で、課題も残ります。国産LLMは近年急速に性能向上が進んでいるものの、パラメータ規模や学習データ量の面では依然として米国・中国の大手モデルと比較する議論が絶えません。行政実務での利用には高い正確性と安定した稼働が求められるため、試用フェーズにおける検証は厳しい基準のもとで行われる見通しです。コスト面でも、ライセンス料や運用インフラの整備に要する費用対効果の評価が焦点となります。
政府は2025年に閣議決定した「AI活用国家戦略」の中で、公共分野における国産AI技術の優先活用を方針として掲げており、今回の試用はその具体的な施策の一環と位置づけられています。国産LLMの行政導入が本格化すれば、国内AI産業の育成や技術競争力の強化にも寄与するとの期待があります。
試用結果の評価を経て、早ければ2027年度中に本採用の判断が下されるとみられています。国産LLMが「源内」の中核を担うことになれば、日本における官民連携のAI活用モデルとして国際的にも注目される事例となる可能性があります。今後の検証の進捗と、各社モデルの実務適性評価の行方に関心が集まります。
