医療事故3849件、院内調査完了率89.4%—日本医療安全調査機構が公表
日本医療安全調査機構は2026年6月末時点での累計医療事故報告件数が3849件に達したことを公表した。うち89.4%にあたる案件で院内調査が完了している。
日本医療安全調査機構は、医療事故調査制度が運用を開始してから2026年6月末までの累計報告件数が3849件に達したことを明らかにしました。このうち89.4%にあたる案件で院内調査が完了しており、制度全体として一定の進捗が示されています。残る約10.6%については現在も調査が継続中とみられます。
医療事故調査制度は2015年10月に施行された医療法の改正に基づき導入されたもので、医療機関において予期しない死亡または死産が発生した際に、院内調査を実施し同機構へ報告することを義務付けています。制度の目的は医療事故の原因究明と再発防止であり、患者への補償や刑事責任の追及を直接の目的とはしていません。この点が一般の事故調査制度と異なる特徴の一つです。
年間の報告件数は制度開始当初から緩やかな増加傾向にあり、医療現場での制度認知と報告文化の醸成が進んできたとみられます。一方で、報告対象となりうる事例が実際にはより多く存在するとの指摘も専門家の間では根強く、現在の数字が実態の全体像を反映しているかどうかについては継続的な議論があります。
院内調査の完了率が89.4%に達している点については、医療安全の分野では前向きな動きとして受け止められています。ただし、調査完了までにかかる期間や、調査報告書の質については医療機関ごとにばらつきがあるとも指摘されています。同機構はセンター調査(第三者調査)の受け付けも行っており、遺族や医療機関からの依頼に応じて独立した立場からの調査も実施しています。
医療事故の内訳を類型別に見ると、外科手術に関連するもの、診断・治療の判断に関するもの、薬剤投与に関するものなどが主要なカテゴリを占める傾向があります(機構の過去公表データに基づく)。こうした傾向の把握は、医療機関が優先的に取り組むべき安全対策の指針となるため、定期的なデータ公表の意義は大きいとされています。
患者側・遺族側の立場からは、調査結果の開示や説明の充実を求める声が引き続き上がっています。制度開始から10年以上が経過した現在、単なる件数の積み上げにとどまらず、調査結果をどのように医療現場の改善へ結びつけるかという「フィードバックの仕組み」の強化が次の課題として浮上しています。
今後は蓄積されたデータの分析をさらに深め、医療機関や学会と連携した再発防止策の横展開が期待されます。また、電子カルテの普及やAIを活用したリスク検知技術の進歩により、事故発生前の予防的なアプローチへの活用も検討が進むとみられます。医療の安全確保は患者・医療者双方にとっての共通課題であり、制度のさらなる成熟が求められています。
