インテル、AI半導体受託の切り札「EMIB-T」でTSMCの供給不足に照準
インテルが先進パッケージング技術「EMIB-T」をAI半導体の受託製造分野で本格展開する方針を示した。TSMCへの需要集中による供給逼迫を商機と捉え、巻き返しを図る。
インテルは、AI半導体の受託製造(ファウンドリ)事業において、独自の先進パッケージング技術「EMIB-T(Embedded Multi-die Interconnect Bridge - Test)」を戦略的な差別化軸として打ち出す方針を明らかにしました。生成AIブームに伴う旺盛な需要を背景に、業界最大手のTSMCに注文が集中し、納期の長期化や供給不足が深刻化している現状を商機として捉えた動きとみられます。
EMIB-Tは、複数の半導体チップを一つのパッケージ内に高密度・低遅延で接続するためのインターコネクト技術です。従来のEMIB技術をAI向けの大規模チップレット設計に最適化したバリアントとされており、GPU・メモリ・アクセラレーターを組み合わせた複合チップの製造において高い競争力を持つと業界関係者の間では評価されています。AIワークロードでは複数の演算コアと大容量メモリを極めて短い距離で接続する必要があり、こうしたパッケージング技術の優劣が性能と消費電力に直結します。
背景には、TSMCへの依存度が業界全体で過度に高まっているという構造的な問題があります。エヌビディア、AMD、クアルコムをはじめとする主要チップ設計企業の多くがTSMCの最先端プロセスに製造を委託しており、特にAI向け先端ノードの受託生産キャパシティは慢性的に不足しているとみられています。この状況が、顧客企業にとっての「第二の調達先(セカンドソース)」確保の必要性を高めており、インテルにとって事業拡大の追い風となっています。
インテルのファウンドリ事業(Intel Foundry)は、2024年以降の事業再編の中で独立した損益管理部門として位置づけられ、外部顧客の獲得に注力してきました。同社は18Aをはじめとする最先端プロセスの量産立ち上げを進めており、パッケージング分野ではEMIBのほかFoveros技術も保有しています。EMIB-Tは、これらの技術群をAI半導体受託という市場ニーズに直接結びつける重要な製品と位置づけられています。
一方で、インテルがファウンドリ事業で成果を出すまでには依然として課題も残ります。歩留まり(製造良品率)の安定化や顧客の設計資産(IP)対応など、量産体制の信頼性を証明することが不可欠です。また、TSMCが同様のパッケージング技術(CoWoSやSoIC)を積極的に拡張投資していることも、競争環境の厳しさを示しています。
AI半導体市場は今後も急拡大が続くとみられており、製造能力の分散・多様化を求める動きは業界全体で強まっています。インテルがEMIB-Tを軸にした受託製造で一定のシェアを確保できるかどうかは、同社の事業構造転換の成否を左右する試金石となりそうです。2026年後半から2027年にかけての受注動向が、その実力を判断する上での重要な指標になるとみられます。
