農林漁業従事者の3人に1人が目の不調で仕事に支障、4割超が受診せず就労継続
一次産業従事者を対象にした目の健康に関する実態調査で、3人に1人が目の不調によって仕事や作業に支障をきたしていることが明らかになりました。一方で、4割を超える人が不調を感じながらもそのまま仕事を続けた経験があると回答しており、目の健康管理における深刻な課題が浮き彫りとなっています。
農業・林業・漁業などに携わる一次産業従事者の目の健康に関する実態調査の結果が公表され、業界内の深刻な健康管理の実情が明らかになりました。調査によると、一次産業従事者の約3人に1人が「目の不調によって仕事や作業に支障がある」と回答。さらに、4割を超える人が目の不調を自覚しながらも医療機関を受診せず、そのまま仕事を続けた経験があることが判明しました。屋外での長時間作業が多い一次産業ならではの実態が、数字として可視化された形です。
一次産業の現場では、農作業中の強い紫外線への長時間露出や、漁業における水面からの反射光、林業での細かい作業など、目に対して大きな負担をかける環境での就労が日常的となっています。こうした環境的なリスク要因が積み重なることで、白内障や翼状片(よくじょうへん)、紫外線による角膜炎など、屋外労働者に特有の眼疾患が発症しやすいと、眼科領域の専門家は以前から指摘してきました。今回の調査結果は、こうした専門家の懸念が実際の就労現場においても顕在化していることを裏づけるものとなっています。
注目すべき点は、不調を認識していながらも受診しない割合の高さです。調査では、目の不調を感じてもそのまま仕事を続けた経験があると答えた割合が4割を超えており、受診行動につながっていない実態が明らかになりました。背景には、農繁期など繁忙期に医療機関へ足を運ぶ時間的余裕がないこと、過疎地域では眼科医療へのアクセスが限られていること、そして「多少の不調は仕事につきもの」という就労文化が根強いことなどが影響しているとみられます。
日本の一次産業を取り巻く環境は、近年さらに厳しさを増しています。高齢化が進む農村部では、就労者の平均年齢が上昇しており、加齢とともにリスクが高まる眼疾患への対策はより喫緊の課題となっています。農林水産省のデータによると、農業就業人口の平均年齢はすでに60代後半に達しており、目の健康管理を含む高齢就労者の安全対策は産業全体の持続可能性にも直結する問題です。今回の調査結果は、こうした構造的な問題を改めて浮き彫りにしたと言えます。
また、目の不調は仕事の安全性にも直接影響します。農業機械の操作や高所での林業作業、漁船上での作業など、視力や視野の低下が重大事故につながるリスクのある場面が一次産業には多く存在します。目の不調を放置したまま就労を続けることは、本人の健康被害にとどまらず、労働災害のリスクを高める要因ともなりえます。業界団体や行政による健康管理支援の充実が、安全面からも急務と言えるでしょう。
今後の展望としては、一次産業従事者が働く地域での巡回眼科検診の拡充や、農繁期を避けた受診促進キャンペーンの実施、紫外線カット機能を備えた保護眼鏡の普及支援といった取り組みが求められます。また、デジタル技術を活用した遠隔眼科診療(オンライン診療)の整備も、地方在住の一次産業従事者が専門的な医療にアクセスしやすくなる手段として期待されています。今回の調査結果を契機に、産業・医療・行政が連携した目の健康対策が具体的に前進することが望まれます。
