「見せかけAI」を巡る訴訟が急増、米当局が摘発を強化
AI技術を実際より誇大に見せかけて投資家を欺いたとされる「AIウォッシング」を巡る訴訟が米国で急増している。証券取引委員会(SEC)を中心に当局の摘発も強化されており、企業のAI関連開示のあり方が問われている。
実態を伴わないにもかかわらず、自社製品やサービスをAI活用として誇大に宣伝し、投資家を欺いたとされる「AIウォッシング」を巡る訴訟が、米国を中心に急増しています。2026年に入ってから関連する民事訴訟や集団訴訟の件数は前年同期比で大幅に増加しているとみられ、法律専門家の間でも新たな訴訟リスクとして警戒感が高まっています。
「AIウォッシング」とは、実際にはAI技術をほとんど、あるいはまったく活用していないにもかかわらず、投資家や消費者に対して「AI搭載」「AI駆動」などと称して誤解を与える行為を指します。環境配慮を装う「グリーンウォッシング」になぞらえた概念で、AI投資ブームが過熱した2023年以降、こうした事例が世界各地で相次いで報告されてきました。
米国では証券取引委員会(SEC)がAIウォッシングを証券詐欺の一形態として位置付け、調査・摘発を強化しています。SECはすでに複数の企業に対して制裁金を科しており、今後も同様の事案への対応を継続する姿勢を示しているとされます。また、連邦取引委員会(FTC)も消費者保護の観点から、AI関連の誇大広告に対する監視を強めていると報じられています。
民事訴訟の面では、株主や投資家が企業に対して損害賠償を求めるケースが目立っています。訴状の多くは、「AI活用」を強調した企業の発表や広告によって株価が一時的に上昇し、その後、実態が明らかになって株価が急落したことで損失を被ったという主張に基づいています。集団訴訟(クラスアクション)の形式で提起されるケースも多く、一件あたりの請求額が数千万ドル規模に達するケースもあるとみられます。
こうした問題は米国に限らず、欧州や日本でも注目されつつあります。欧州ではAI規制法(EU AI Act)の施行が進む中、AI関連の表示・開示に関する要件が企業に課されており、違反した場合の制裁リスクが高まっています。日本においても、金融庁や消費者庁がAI関連表示の適正化に向けた議論を進めているとされ、国際的な規制の潮流が企業行動に影響を与えはじめています。
業界関係者の間では、AIウォッシング訴訟の増加を受け、企業が投資家向け資料や広告においてAIの活用実態をより正確に開示する動きが広がるとみられています。一方で、AIの定義や「どこまでの活用を『AI搭載』と呼べるか」という基準が明確でない場合も多く、法的グレーゾーンの解釈を巡る争いが今後も続く可能性があります。
AIへの期待が社会全体で高まる中、「見せかけ」による信頼の毀損は産業全体のイメージを損なうリスクもはらんでいます。今後は当局による摘発強化と並行して、AI活用の実態に関する開示基準の整備や、投資家・消費者向けのリテラシー向上も重要な課題となりそうです。AIウォッシングを巡る法的・規制的な動向は、2026年後半以降もテクノロジー業界の大きな焦点であり続けるとみられます。
