メタがAIで病気・育休中の社員を狙い撃ち解雇か 現・元従業員26人が集団提訴
米メタ・プラットフォームズが社内AIツールを活用し、病気療養中や育児休暇中の従業員を選別・解雇したとして、現・元従業員26人が集団訴訟を起こしたことが明らかになりました。
米メタ・プラットフォームズが、社内で運用するAIツールを用いて病気療養中や育児休暇中の従業員を「狙い撃ち」で解雇したとして、現・元従業員26人が同社を相手取り集団訴訟を提起したことが、2026年7月26日までに複数の海外メディアの報道で明らかになりました。訴状では、AIシステムが対象者の健康状態や休暇取得状況をもとにスクリーニングを行い、人事判断に反映させていたと主張されています。
訴訟を起こした原告側によると、メタは2025年から2026年にかけて実施した大規模なレイオフや業績評価プロセスにおいて、AIによる人員分析ツールを活用していたとされます。このツールが従業員の勤怠データや人事記録を解析し、療養・育休中という「脆弱な状況」にある人物を優先的に削減候補としてリストアップしていた疑いが持たれています。米国では、病気や育児を理由とした解雇は「家族・医療休暇法(FMLA)」や各州の障害者差別禁止法に違反する可能性があり、法的に極めて重大な問題となります。
背景には、メタが近年進めてきたAI主導の経営効率化があります。同社のマーク・ザッカーバーグCEOは2025年初頭、「2025年はAIによる社内業務の自動化を加速する年にする」と宣言し、人事・採用・評価の各プロセスへのAI導入を積極的に推進してきました。こうした方針のもと、AIが人事決定に深く関与する体制が整備されたとみられており、今回の訴訟はその負の側面が表面化した形となっています。
AIによる人事管理をめぐっては、テクノロジー業界全体で課題が顕在化しています。アルゴリズムが意図せず特定の属性を持つグループを不利に扱う「アルゴリズム差別」の問題は、米雇用機会均等委員会(EEOC)も注視しており、複数の企業がすでに調査・指導を受けた事例が報告されています。メタのケースはその中でも訴訟に至った数少ない事案となり、業界関係者の間でも注目が集まっています。
メタ側はこれまでのところ、訴状の内容について公式に詳細なコメントを出しておらず、「訴訟については法的手続きの中で対応する」との立場を示すにとどまっています。一方、原告側の法律チームは、ディスカバリ(証拠開示)手続きを通じてAIツールの仕様や判断ログの開示を求める方針とされており、裁判の行方次第ではシステムの内部構造が明らかになる可能性もあります。
今後の展望として、この訴訟はAIを活用した人事管理のあり方に対する法的・社会的議論をさらに加速させるとみられます。米議会では、雇用分野におけるAI利用を規制する法案の検討が進んでおり、欧州連合(EU)では「AIアクト」に基づく高リスクAIの規制対象として雇用・採用ツールが明確に位置づけられています。テクノロジー企業がAIで業務効率化を追求する流れは当面続くとみられる一方、その透明性・公正性をどう担保するかが、企業の信頼性を左右する重要な経営課題として浮き彫りになっています。
