高市首相「デフレ脱却と言える状況にない」 円安163円台で揺れる物価・金融政策
高市首相がインフレ対策をめぐる国会質疑でデフレ脱却に慎重な見解を示した。ドル円が163円台で推移するなか、日銀の利上げ姿勢と政権の物価観のズレが市場の注目を集めている。
高市早苗首相は28日、インフレ対策をめぐる議論の中で「現時点でデフレを脱却したと言える状況にはない」との認識を改めて示しました(毎日新聞報道)。物価上昇が続く一方で、実質賃金の伸びが十分でないことを根拠に、政府としてはデフレ脱却の公式宣言には慎重な立場を維持する姿勢が明確になりました。
この発言が注目される背景には、為替市場の動向があります。2026年7月28日時点でドル円相場は1ドル=163.73円で推移しており、輸入物価の押し上げを通じた「悪いインフレ」への懸念が根強く残っています。政府が「デフレ脱却未達」を強調することは、金融緩和の余地を残す意図とも読み取れるため、円安をさらに容認するシグナルとして市場が受け取るリスクも指摘されています。
株式市場では、日経平均株価が6万4,931.19円(前日比+320.04円、+0.5%)と底堅い動きを見せました。一方、TOPIX(東証株価指数)は前日比横ばいの105.18ポイントにとどまっており、指数間で温度差が生じています。円安メリットを享受しやすい輸出・製造業が日経平均を下支えしているとみられますが、内需関連株などは慎重な動きが続いています。
金融政策面では、今週に予定されるFOMC(米連邦公開市場委員会)と日銀金融政策決定会合の結果が焦点となっています。野村證券のリサーチによれば、円相場と債券市場の安定には日銀の利上げ姿勢が重要な鍵を握るとされており、日銀が利上げに踏み切るか、あるいは現行の緩和的スタンスを維持するかによって、ドル円の方向性が大きく左右される局面です。市場では161〜165円のレンジを軸とした動きが続くとの見方が多く、このレンジを突破した場合には政策当局による介入も意識されています。
政府・日銀間の政策スタンスのズレも、市場参加者が注視するポイントです。高市政権が「デフレ未脱却」を強調することで財政出動の必要性を訴え続ける一方、日銀は物価目標の持続的達成に向けた政策正常化を模索しています。市場では「骨太の方針ショック」とも称される財政拡張路線と金融引き締め方向との緊張関係が、円安・金利上昇の同時進行というかたちで債券・為替市場に影響を与えつつあるとの見方もあります。
今後の焦点は、日銀が7月の会合で追加利上げに踏み切るかどうかに集まっています。専門家の間では、インフレ率の推移や実質賃金の動向次第で日銀が年内にも政策変更を検討する可能性を指摘する声がある一方、高市政権の経済認識と整合性を保つ形で利上げが先送りになるリスクも排除できないとみられています。ドル円が163円台後半で推移を続ければ、輸入コスト上昇を通じた国民生活への影響が拡大するおそれもあり、政府・日銀双方の次の一手が日本経済の行方を左右する重要な分岐点となりそうです。
