AI同士の議論が数往復で停滞、ホンダは対話型に転換し開発4割短縮
ホンダは自動車の安全設計にAIエージェントを導入し、当初のAI同士の議論は数往復で行き詰まりましたが、デザイナーとの対話型手法に転換したことで開発期間を約4割短縮できたとみられます。
ホンダが自動車の安全設計プロセスにAIエージェントを組み込む取り組みを進めていることが報じられました。衝突安全対策などの分野でAIが車両のデザインや設計の修正点を瞬時に複数提示できるようにし、開発期間の短縮につなげる狙いがあります。日本経済新聞の報道によると、既存の大規模言語モデル(LLM)を自社向けに独自設計し、自律的に作業を進めるAIエージェントを実用化したとされています。
開発の過程では、2体のAIエージェントに議論をさせる手法が試みられましたが、当初はうまく機能しなかったといいます。AI同士のやり取りは数往復で止まってしまい、いわゆる「ワイガヤ」的な発散的議論には至らなかったとされています。人間同士であれば意見の対立や視点の違いから議論が広がっていく場面でも、AI単独の対話では深まりに欠ける課題があったとみられます。
この課題に対し、ホンダはデザイナーの造形案をAIとの対話で検証する手法へと転換しました。AIエージェント同士に完結させるのではなく、人間の担当者がAIとやり取りしながら案を磨き上げる協働型のプロセスに切り替えたことがポイントとされています。現在は歩行者保護性能の検証を対象に運用されており、この分野において開発期間を約4割短縮できているとのことです。
背景には、AIが学習・推論しやすくするための衝突安全データの蓄積や運用体制の見直しがあったとみられます。データ基盤を整備した上でAIエージェントを実装したことが、実用化につながった要因の一つと考えられます。日本経済新聞は、ホンダが開発期間を4割以上短縮することを目指していると報じており、今回明らかになった歩行者保護性能での成果はその一環と位置づけられます。
自動車業界では、新型車の開発スピードで先行する中国メーカーへの対抗が課題となっており、ホンダによるAI活用はこうした競争環境を意識した動きとみられます。安全設計という専門性の高い領域でAIを実務に取り入れる試みは、他の自動車メーカーの開発体制にも影響を与える可能性があります。
今後は、歩行者保護性能以外の安全設計領域にも同様の手法が広がるかどうかが注目されます。AI同士の議論が停滞した経緯を踏まえ、人とAIが協働する形での活用がどこまで拡大するか、開発現場での運用実績の積み重ねが今後の展開を左右するとみられます。

