政府は7日の閣議で、人工知能(AI)の開発・普及を促進するため、個人情報保護法の改正法案を決定しました。学術研究や技術開発を目的とした個人データの活用について、現行の厳格な規制要件を一部緩和し、AI分野での日本の国際競争力向上を図る狙いです。
改正法案では、AI開発に必要な大量のデータセット構築において、個人の同意取得手続きを簡素化する仕組みを導入します。現在は個人データを学習用に使用する際、原則として本人の明示的な同意が必要ですが、公益性が高く、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合には、同意なしでの利用を可能とする方向です。
背景には、ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及と、これに対応する日本企業の遅れがあります。米国や中国では大規模言語モデルの開発が進む一方、日本では個人情報保護規制が厳しく、十分な学習データの確保が困難との指摘が産業界から上がっていました。経済産業省の試算によると、AI関連市場は2030年に約87兆円規模に達するとみられており、データ活用環境の整備が急務となっています。
具体的な緩和措置としては、匿名加工情報の作成要件の見直しや、研究機関における個人データの取り扱い基準の明確化などが盛り込まれる予定です。また、AI開発企業が海外からデータを取得する際の手続きも簡素化し、グローバルなデータ流通に対応した制度設計を目指します。
一方で、プライバシー保護団体からは個人の権利が軽視される可能性への懸念も示されています。政府は個人情報保護委員会による監督体制の強化や、データ利用の透明性確保に関するガイドライン策定を並行して進める方針です。
法案は今国会での成立を目指しており、可決されれば2025年度中の施行が予定されています。デジタル庁では関連する政令・省令の整備を急ぐとともに、産業界との対話を継続し、実効性のある制度運用を図る考えです。
今回の規制緩和により、国内AI企業の技術開発が加速され、米中に対する競争力の向上が期待されます。ただし、個人の権利保護とイノベーション促進のバランスをいかに取るかが、今後の制度運用における重要な課題となりそうです。
