米IBM、1ナノ未満の半導体技術を世界初発表 次世代チップ開発競争が新局面へ
米IBMが1ナノメートル未満の半導体製造技術を世界で初めて発表した。AI需要を背景に激化する半導体性能競争が、物理的限界とされてきた領域へと踏み込んだ。
米IBMは、1ナノメートル(nm)を下回る半導体製造技術を世界で初めて発表した。半導体の微細化は「1nm」が長らく物理的・技術的な壁として認識されてきたが、IBMの今回の発表はその限界を突破する可能性を示すものとして、業界内外から大きな注目を集めている。
現在、半導体製造の最先端を担うのは台湾のTSMCや韓国のサムスン電子であり、2nm世代のチップ量産が2025年から始まっているとされる。IBMはこれらのファウンドリ(受託製造)企業とは異なるアプローチで研究開発を主導してきた実績があり、過去にも2nm技術のプロトタイプを世界に先駆けて発表したことで知られる。今回の「1nm未満」技術は、研究段階の成果発表とみられるが、将来の商用化に向けた重要なマイルストーンと位置づけられている。
半導体の微細化が進むほど、同じ面積のチップに搭載できるトランジスタ数が増加し、演算性能の向上や消費電力の低減につながる。生成AIの急速な普及により、データセンターでは大規模な演算処理が常態化しており、より高性能かつ省電力なチップへの需要は今後さらに高まると予測されている。こうした背景が、各社の極限微細化競争を加速させている要因の一つとなっている。
技術的な観点では、1nm以下の領域では従来のシリコン材料を用いた製造プロセスが困難になるとされており、新素材や新構造の採用が不可欠とみられる。IBMは今回の技術において、ゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタ構造をさらに発展させた手法を採用したと報道されている。こうしたアーキテクチャの転換は、業界全体の設計・製造プロセスに影響を与える可能性がある。
一方で、研究レベルの発表から実際の量産技術への移行には、通常数年単位の期間を要する。半導体業界の専門家の間では、今回の発表が商用製品に直結するかどうかについては慎重な見方も存在する。歩留まり(正常品の製造割合)の確保や製造コストの現実的な水準への引き下げといった課題を克服するまでには、相応の時間とコストが必要とみられている。
米中の半導体技術競争が激化する中、米国政府はCHIPS法などを通じて自国の半導体産業への投資を強化している。IBMの今回の発表は、米国の半導体技術における優位性を示す象徴的な成果として、政策面からも注目されている。
今後の焦点は、IBMが今回の技術をTSMCやインテルなどの製造パートナーと連携して量産につなげられるかどうかにある。AIインフラの拡充が世界規模で続く中、1nm未満世代の技術が実用化に向けて着実に前進するか、業界全体が動向を注視している。
