韓国、半導体・AIで「3大メガプロジェクト」推進 サムスン・SKが南西部に大規模投資
韓国政府が次世代半導体とAI分野での国際競争力強化に向けた「3大メガプロジェクト」を本格始動。サムスン電子とSKハイニックスが南西部の産業集積地への大規模投資を表明し、AI時代の半導体主導権をめぐる国家戦略が動き出した。
韓国政府は2026年6月、半導体・AI分野における国際競争力の強化を目的とした新たな産業戦略「3大メガプロジェクト」を発表しました。同戦略の柱となるのが、韓国南西部の産業集積地を中心とした大規模な設備・研究開発投資であり、サムスン電子とSKハイニックスの両社がその主要な担い手として名乗りを上げています。韓国政府はこの取り組みを通じ、AI時代に不可欠な次世代半導体の設計・製造領域において主導権を確立したい考えです。
今回の戦略で注目されるのは、従来の首都圏・京畿道への集中から脱却し、南西部地域への分散投資を促進する点です。韓国メディアの報道によれば、政府は同地域に対して数十兆ウォン規模(推計)のインフラ整備支援を検討しているとみられており、税制優遇や規制緩和とあわせた総合的なパッケージが議論されています。産業の地理的分散は、有事リスクへの対応としても評価されています。
「3大メガプロジェクト」の具体的な柱としては、①AI向け高帯域幅メモリ(HBM)の次世代品開発、②先端ロジック半導体の国産化加速、③半導体・AI人材の育成・確保、の3分野が挙げられています。HBM市場ではSKハイニックスが現在高いシェアを有しているとされており、後継世代の開発競争でも優位性を維持することが同社にとっての最重要課題となっています。
背景にあるのは、米中対立や各国の半導体補助金競争が激化する中での「技術安全保障」への危機意識です。米国の「CHIPS法」、日本の半導体国産化支援、欧州の「欧州半導体法」など、主要各国・地域が相次いで国家主導の産業政策を打ち出している中、韓国も官民一体の戦略的投資で対抗姿勢を明確にしています。業界関係者の間では、AI向け先端半導体の需要は今後も高水準が続くとみる声が多く、投資タイミングとしての緊急性も高まっています。
サムスン電子は近年、先端ロジック半導体の受託製造(ファウンドリ)事業においてTSMC(台湾積体電路製造)との差を縮めることが課題とされており、今回の国家戦略との連動により投資加速と技術力向上が期待されています。一方のSKハイニックスは、HBM3Eおよびその後継品の量産体制強化を急いでおり、南西部への新拠点整備がその一翼を担う可能性があるとみられています。
人材面でも課題は山積しています。韓国国内では半導体・AI分野の高度専門人材の不足が深刻化しているとされており、今回の戦略には大学・研究機関との連携強化や海外人材の呼び込みを含む育成プログラムの拡充も含まれる見通しです。業界関係者の間では、「技術だけでなく人材への投資が競争力の持続性を左右する」との見方が広まっています。
今後の焦点は、政府の支援策が具体的な立法・予算措置として実現するかどうかです。韓国では政権交代に伴う政策の連続性が課題として指摘されることもあり、産業界からは超党派での長期的なコミットメントを求める声も上がっています。AI向け半導体需要が中長期的に拡大するとみられる中、韓国がこの戦略を着実に実行できるかが、同国の産業競争力を左右する分岐点になりそうです。
