「独りが好き」でも社会とのつながりが健康長寿の鍵、東京都健康長寿医療センター研究所が調査結果を公表
「独りでいることが好き」という人であっても、無理のない範囲で社会や他者とつながることが心の健康維持に重要であることが、東京都健康長寿医療センター研究所の調査で明らかになりました。
東京都健康長寿医療センター研究所は、「独りが好きな人」であっても、心の健康を保つためには無理のない形で社会や他者とつながることが重要であるとする研究結果を公表しました。近年、「おひとりさま」ライフスタイルへの注目が高まる中、孤立と孤独の違い、そしてそれぞれが健康に与える影響についての科学的な知見として注目されています。
日本では高齢化の進展とともに、単身世帯の増加が続いています。2020年の国勢調査によると、単独世帯の割合は全世帯の約38%に達しており、今後もその割合は上昇傾向にあるとみられています。こうした社会的背景のもと、孤独・孤立対策は国の重要政策の一つとして位置づけられており、2023年には「孤独・孤立対策推進法」が施行されました。
今回の研究が示す重要なポイントの一つは、「孤独(solitude)」と「孤立(isolation)」の区別です。自らの意志で一人の時間を楽しむ「孤独」は必ずしも健康に悪影響を与えるわけではありませんが、社会的なつながりが断絶された状態の「孤立」は、うつ病や認知機能の低下、さらには死亡リスクの上昇とも関連するとされています。専門家による複数の研究では、社会的孤立が健康に与えるリスクは、1日15本のタバコを吸うことに相当するとも指摘されています。
同センター研究所の調査では、一人でいることを好む傾向がある人々においても、週に数回程度の対面または非対面でのコミュニケーション(電話・SNSを含む)を維持している群は、ほとんど他者と関わらない群と比較して、精神的健康度のスコアが有意に高い傾向が確認されたとされています。この結果は、社会参加の「質」と「量」のバランスを個人の特性に合わせて調整することの重要性を示唆するものです。
研究の示唆する「無理のないつながり」とは、趣味のグループへの参加や、近所の人との短い会話、オンラインコミュニティへの参加など、形式を問わない多様な形の社会的接触を指します。高いコミュニケーション能力や外向的な性格を前提とした「つながり」ではなく、内向的な人や社交が苦手な人でも継続しやすい、ハードルの低い接触の積み重ねが鍵とみられています。
日本政府は孤独・孤立対策の一環として、地域コミュニティの活性化や、高齢者向けのデジタル活用支援など複数の施策を展開しています。また、民間でも高齢者や単身者向けの見守りサービス、コミュニティスペースの整備などが広がりつつあります。今回の研究成果は、こうした施策の設計においても、参加者の多様な性格特性や生活スタイルへの配慮が必要であることを改めて示すものといえます。
超高齢社会が深まる日本において、健康長寿の実現は社会保障の持続可能性にも直結する重要課題です。今後は「一人でいたい人も孤立させない」という視点に立った、よりきめ細かな支援の仕組みづくりが求められるとみられます。東京都健康長寿医療センター研究所を含む研究機関による知見の蓄積が、政策立案や地域ケアの現場にどのように活かされるか、引き続き注目されます。
