メモリー価格が6倍に高騰、スマホ・PCが年2億台減の試算
半導体メモリーの価格急騰が消費者向け電子機器市場を直撃している。スマートフォンとPCの年間販売台数が合計で最大2億台減少するとの推計が業界内で広がっており、AIブームの恩恵が一部メーカーに集中する構造的な問題が浮き彫りになっている。
AIサーバー向けの旺盛な需要を背景に、DRAM・NANDフラッシュを中心とした半導体メモリーの市場価格が、2024年初頭と比べて最大6倍程度まで上昇したとの報道が相次いでいる。この「半導体インフレ」とも呼ぶべき価格高騰が、スマートフォンやパソコンといったコンシューマー向け機器の生産・販売計画に深刻な影響を与えており、2026年通年で合計最大2億台規模の需要が蒸発するとの推計が業界関係者の間で取り沙汰されている。
背景にあるのは、生成AIの急速な普及に伴うデータセンター投資の爆発的な拡大だ。大手クラウド事業者やAIスタートアップは競ってGPUクラスターを積み増しており、高帯域幅メモリー(HBM)をはじめとする高性能メモリーへの需要が供給を大幅に上回り続けている。サムスン電子やSKハイニックス、マイクロンといった大手メモリーメーカーは、より付加価値の高いAI向け製品の生産を優先しているとみられ、コンシューマー向けの汎用メモリーの供給余力が相対的に縮小している構図だ。
消費者への影響は既に顕在化しつつある。スマートフォンメーカー各社は部品調達コストの上昇分を吸収しきれず、エントリーモデルからミドルレンジ帯にかけての端末価格を段階的に引き上げている。特に価格感応度の高い新興国市場では買い替えサイクルの延長が加速しているとの見方がある。PC市場でも同様の傾向が報告されており、法人向けのリース・買い替え需要が先送りされるケースが増えているとされる。
一方で、この状況を「好機」と捉える企業も存在する。放熱材や実装関連素材、高密度配線基板など、半導体の性能向上を支える周辺部材を手がけるメーカーには引き合いが集まっており、いわゆる「隠れ半導体関連株」として市場の注目を集める企業も出てきている。AIサーバーは発熱量が飛躍的に増大しており、冷却・放熱ソリューションへの需要は当面続くとみられている。
構造的な問題として指摘されているのが、半導体業界の「独り勝ち」の持続可能性だ。データセンター向けへの生産集中は短期的には収益を最大化するが、コンシューマー市場の冷え込みは最終的に半導体の総需要を押し下げるリスクをはらんでいる。家電・スマートフォン・自動車など幅広い産業がコスト上昇に苦しむ中、その恩恵が特定の半導体企業に偏在する構図に対して、業界内外から持続可能性を問う声が上がり始めている。
今後の焦点は、メモリーメーカーがAI向けと汎用向けの生産配分をどう調整するかにある。各社は設備投資を継続しているものの、新規ファブが本格稼働するまでには一定の時間を要するとみられ、需給の緩和には早くとも2027年以降を見込む向きが多い。コンシューマー電子機器メーカーにとっては厳しい調達環境が当面続く見通しで、製品ポートフォリオの見直しや、メモリー搭載量の最適化による原価管理など、各社の対応策が試される局面が続きそうだ。
