円安が直撃、メキシコ世界遺産テオティワカン発掘に資金危機
円安の進行と米政府の助成金打ち切りにより、メキシコの世界遺産テオティワカン遺跡で半世紀近く発掘を続けてきた研究者が資金難に直面し、クラウドファンディングでの資金調達に乗り出しました。
メキシコの世界遺産テオティワカン遺跡で発掘調査を続けてきた米アリゾナ州立大学研究教授の杉山三郎氏(74)が、調査資金を確保するためクラウドファンディングを開始したことが分かりました。円安の進行と米政府からの助成金打ち切りが重なり、研究環境が厳しさを増しているといいます。
テオティワカン遺跡は、メキシコ市近郊にある紀元前後から紀元後6世紀まで栄えた古代都市の遺構で、最盛期には10万人が暮らしていたとされています。言語や民族、統治体制など多くの謎が残されており、世界的に注目される考古学研究の対象です。
杉山氏は1978年に単身メキシコへ渡り、約45年間にわたって発掘に携わってきました。外国人研究者でありながら、遺跡を代表する「羽毛の蛇神ピラミッド」「月のピラミッド」「太陽のピラミッド」の3大ピラミッド全ての発掘調査を、メキシコ人研究者らと共に計画・実施しています。2023年には日本とメキシコ間の学術交流に貢献した功績が認められ、瑞宝小綬章を授与されました。
2015年からは、太陽のピラミッドと月のピラミッドの間にある「石柱の広場」の発掘調査に着手しています。この広場では、古代メキシコのマヤ王朝との交流を示す壁画や、いけにえとされる人骨の残骸など、大規模な儀式の跡とみられる遺構が見つかっており、隣接する地区が「宮殿」であった可能性が指摘されています。杉山氏らは2027年度にこの地区の集中的な発掘を計画していましたが、資金難がその実現を阻む状況となっています。
背景には、円安による現地での人件費や資材費の実質的な負担増があるとみられます。21日のドル円相場は159.05円で推移しており、円建てで送金・調達する研究資金の目減りが、海外での長期プロジェクトに影響を及ぼしている構図がうかがえます。加えて、これまで研究を支えてきた米政府からの助成金が打ち切られたことも、資金確保をより困難にしている要因とみられます。
こうした状況は、文化財の発掘・保存事業が置かれる資金環境の脆弱さを浮き彫りにしています。公的支援が細る中でクラウドファンディングに頼らざるを得ない事例は今後も増える可能性があり、長期にわたる学術調査の継続性をどう確保するかが課題として浮上しています。
テオティワカン遺跡の調査は、古代都市の統治体制や文化交流の実態を解明する上で重要な意味を持つとされています。円安基調が続けば、海外での学術調査を担う日本人研究者への影響はテオティワカンに限らず広がる可能性もあり、今後の資金確保の行方が注目されます。
