保健所代表電話の取り次ぎ9割自動化、福岡市がAI電話を7月本格運用
福岡市保健所の代表電話で、AIが用件を聞き取り担当課へ取り次ぐ「AIオペレーター」の運用が本格化しました。入電の約9割をAIのみで処理できているといいます。
福岡市は、保健所の代表電話にかかってきた問い合わせについて、AIが用件を聞き取り担当課へ取り次ぐ「Graffer AIオペレーター」の本格運用を、2026年7月から始めました。市民は音声ガイダンスに従って番号を選ぶ必要はなく、普段どおりの言葉で話すだけで、AIが適切な担当課を判断して電話をつなぐ仕組みです。AIが用件を判別できなかった場合には、これまでどおり職員が対応し、担当課の電話番号を口頭で案内する運用が維持されています。
導入の背景には、福岡市が令和6年に行った組織再編があります。それまで7つの区ごとに設置していた保健所は1つに集約されましたが、市民に密着したサービスの多くは各区役所の担当課が引き続き担っており、保健所の代表電話にかかる問い合わせのうち約8割は各区役所で対応する内容だったといいます。保健所と各区役所の庁舎は別々で、電話をそのまま転送できるシステムもなかったため、担当課の番号を伝えて一度切ってもらい、市民に改めてかけ直してもらう「二度手間」が生じていました。
保健所の代表電話には月に450件ほどの電話がかかっており、件数自体は膨大とは言えないものの、昼休みの時間帯も含めて職員が交代で対応する必要があり、恒常的な負荷になっていたといいます。市はコールセンターへの委託も検討しましたが、コスト面で見合わない部分があったことから、より安価に解決できる手段としてAI電話に着目し、まずは実証実験を行う流れになりました。
実証実験では、AIが応答した電話のうち約9割の取り次ぎがAIのみで完了しました。残りの1割には、福岡市外の窓口宛ての問い合わせなど、AIでは判別が難しい内容が含まれていたといいます。市民からは「電話をかけたら最初にAIが出てきて驚いた」といった声が寄せられた一方、AIが対応したこと自体へのクレームはなかったとされています。実証期間終了後には従来どおりの電話件数に戻ったことから、AI電話がどれだけ職員の対応を吸収していたかが実感できる結果になったといいます。
運用を始めてしばらくの間は、各区の担当課から「担当外の案件が転送されてきた」との声も一部寄せられていました。AIの判定が誤ったケースがあったためで、市は対話ログを確認しながら改善を重ね、期間の後半にはこうした誤転送に関する声はほとんどなくなったとしています。市民ごとに言い回しが異なることや、保健所業務に専門用語が多く登場することを踏まえ、AIが参照するFAQの整備や事前テストの繰り返しを通じて、精度の向上を図ってきたといいます。
本格運用の開始後も、市は対話ログを継続的に確認しながらFAQの見直しを進め、市民がよりストレスなく担当課につながる体験づくりに取り組む方針を示しています。将来的には、担当課への取り次ぎだけでなく、その先の応対にもAIを活用できないか検討していく考えも示されており、取り次ぎと応対の両面でAIを活かすことができれば、市民の利便性向上と職員の負担軽減の両立がさらに進む可能性がありそうです。
