抹茶輸出10年で7倍の721億円 円安是非を野村證券が分析
日本からの緑茶輸出額が2025年に過去最高の721億円に達し、円安是非を巡る議論に一石を投じています。野村證券は輸出企業と中小企業で影響が異なると分析しています。
世界的な抹茶ブームを背景に、日本からの緑茶(うち8〜9割が抹茶とされる)輸出額が急拡大していることが、財務省の輸出統計を基にした野村證券のまとめで明らかになりました。2025年の輸出額は過去最高の721億円に達し、過去10年間で7倍に膨らんだといいます。2026年についても1〜6月の実績が2025年同期比で83.5%増と、極めて好調な推移が続いています。
野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平氏は、この抹茶輸出の急拡大を材料に、「日本経済にとって円安と円高のどちらが良いか」という論点を改めて整理しています。同氏の分析によれば、通貨安が経済成長に寄与するという国際金融論の一般的な見方に対し、実際の日本ではアベノミクス以降の長期的な円安局面でも実質輸出の伸びは必ずしも加速していないと指摘されています。背景には、大企業を中心とした輸出産業が現地生産へシフトし、為替変動の影響を受けにくい体制を構築してきた事情があるとされています。
一方で、成長途上にある中堅・中小企業は海外への生産移転が容易ではなく、依然として円安の恩恵を受けやすい立場にあるとの見方が示されています。抹茶を含む農林水産物輸出はその代表例とされ、農林水産物全体の輸出額も2015年の7,500億円弱から2025年には1.7兆円へと2倍強に拡大しました。為替変動の影響を除いても年平均6.5%の高成長を続けているといいます。
訪日外国人観光客の増加も、輸出拡大を後押しする要因として挙げられています。円安を背景に訪日客数が大幅に増える中、日本を訪れた外国人が現地で日本食や日本文化の魅力を発見し、帰国後にその需要が輸出につながるという循環が指摘されています。抹茶はこうした「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の消費喚起策とも重なる代表的な品目とされ、今後は農林水産省が指定する輸出重点品目の中から同様の成長事例が続く可能性があるとの見方も示されています。
こうした円安を巡る議論が続く中、13日の東京株式市場では日経平均株価が64,011.34円で取引を終え、前日比1,259.61円安(マイナス1.93%)と大きく下落しました。TOPIXは105.18ポイントで前日から横ばいとなりました。為替市場では円相場が1ドル=153.55円で推移しており、輸出産業への影響が意識される水準が続いています。
野村證券の分析が示す通り、円安の是非は輸出企業か輸入企業か、大企業か中小企業か、あるいは一般消費者かという立場によって評価が分かれるテーマです。抹茶をはじめとする農林水産物輸出の動向は、円安が日本の成長分野にどのような影響を与えているかを測る一つの指標として、今後も注目が集まりそうです。
