食料品消費税1%方針、飲食店大量倒産の懸念も 専門家が警鐘
高市総理が打ち出した食料品の消費税を1%に引き下げる方針をめぐり、飲食店への深刻な影響が懸念されている。減税期間中に納税額が2倍になる可能性や、食材価格のさらなる高騰リスクを専門家が指摘している。
高市総理が推進する食料品の消費税率を現行10%(軽減税率8%)から1%へと大幅に引き下げる方針が注目を集めています。物価高騰に苦しむ家計への直接的な支援策として期待が高まる一方で、飲食業界や税制の専門家からは制度設計上の深刻な問題点が相次いで指摘されており、2026年8月1日現在、各方面で議論が続いています。
最も大きな懸念として挙げられているのが、飲食店への税務上の影響です。消費税の仕組み上、飲食店は仕入れにかかる消費税を「仕入税額控除」として差し引いた上で納税します。しかし食料品の税率が1%になると、飲食店が仕入れ時に支払う消費税も1%となるため、控除できる金額が大幅に減少します。結果として、売上にかかる消費税との差額、つまり実際の納税額が現行と比べて2倍近くに膨らむ可能性があるとみられています。利益率が元々低い飲食業界では、この負担増が経営を直撃するおそれがあります。
税制の専門家や業界関係者の間では「軽減税率の恩恵を最も受けるべき飲食店が、逆に最も割を食う構造になりかねない」との見方が広がっています。特に中小・零細の飲食事業者は大手チェーンと異なり、税理士費用や経理体制も限られているため、複雑な税務対応に追われるリスクも高いと指摘されています。関西テレビの報道によれば、こうした問題点は飲食業界団体からも政府に対して改善を求める声が上がっているとされています。
さらに別の懸念として、食料品全体の需要増加による食材価格の高騰リスクも取り沙汰されています。消費者にとっての食料品価格が下がれば、購買量が増加することが想定されますが、供給が追いつかない場合には逆に卸売・小売価格が押し上げられ、特に飲食店が仕入れる食材のコストが上昇するという矛盾したシナリオも考えられます。日本の食料自給率(カロリーベース)が38%程度(農林水産省の直近公表値ベース)にとどまる中、輸入食材への依存度が高い分野では、円安と需要増が重なった場合の価格上振れリスクが特に大きいとみられています。
政府が想定する減税期間は「2年間」とされており、期限付きの措置という側面もあります。期間終了後に税率が元に戻った場合、消費者心理の反動減が起きる可能性や、飲食店が2年間で積み上げた損失を回収できないまま廃業に追い込まれるケースも想定されると、業界関係者の間では懸念されています。
一方で、物価高騰が続く現状において、食料品への税負担を軽減すること自体への支持は根強くあります。特に低所得世帯ほど食費が家計に占める割合が高いため、食料品減税が実質的な所得補助になるという見方も少なくありません。複数の自治体では「がやポン」のような電子クーポンによる独自の物価対策支援も並行して進んでおり、国と地方が連携した多層的な支援の重要性が改めて浮き彫りになっています。
今後の焦点は、税率引き下げの具体的な設計において飲食業界への影響をどう緩和するか、そして需給バランスの安定をどう確保するかにあるとみられます。国会での審議や業界団体との協議を経て制度の詳細が詰められる見通しですが、拙速な実施は消費者の恩恵よりも業界の混乱を招きかねないとの見方もあり、丁寧な政策設計が求められています。物価高対策の「切り札」として期待される一方、その副作用をいかに最小化するかが、政策の成否を左右する重要な課題となりそうです。
