米起業家、日本の完璧主義はAI時代に「両刃の剣」と指摘
米テック起業家トーマス・エイダン・カレン氏が、日本企業の慎重さや完璧主義がAI活用の遅れにつながりかねないと指摘しました。総務省の調査でも日本のAI利用率は他国に比べ低水準にとどまっています。
米国とドイツを拠点に7社のテック企業を創業し、独通信大手ドイツテレコムのCTO(最高技術責任者)などを歴任したトーマス・エイダン・カレン氏が、日本企業のAI活用をめぐる課題について語りました。日本の謙虚さや信頼を重んじる文化、完璧主義を高く評価する一方で、AI時代にはこうした特性が「両刃の剣」になり得ると指摘しています。
カレン氏によると、AIの導入自体は日本企業でも広がりつつあるものの、情報収集や議事録作成といった補助的な用途にとどまり、事業モデルそのものを変革する動きには結び付いていないケースが少なくないといいます。日本企業が持つ慎重さには合理性がある一方、AIと正面から向き合わなければ競争力を失いかねないとの見方を示しました。
こうした指摘を裏付けるように、日本企業のAI活用の遅れは調査データにも表れています。総務省が2025年7月に公開した「令和7年版 情報通信白書」によると、2024年度調査での個人の生成AI利用経験率は、中国が81.2%、米国が68.8%、ドイツが59.2%と高水準だった一方、日本は26.7%にとどまりました。
企業レベルでの取り組み状況を見ても、同様の傾向がうかがえます。生成AI活用方針を「策定済み」または「策定予定」とする企業の割合は、米国が約84.8%、ドイツが約76.4%、中国が約92.9%に上るのに対し、日本は49.7%にとどまっており、各国との差が浮き彫りになっています。特に中小企業では、この差がさらに顕著になっているとされます。
日本企業のAI導入が遅れる背景には、品質や正確さを重視し、十分な検証を経てから物事を進める文化的な傾向があるとみられます。この慎重な姿勢は、日本製品の高品質さや信頼性を支えてきた一方、日々急速に進化するAI分野では、完全な検証を待たずに実装を進める場面も求められます。100%の検証を前提とする従来型のアプローチが、結果として導入の遅れにつながっている可能性が指摘されています。
加えて、AIの普及が進むのと歩調を合わせるように、AIを標的とした攻撃も高度化・多様化しているといいます。生成AIやエージェント型AIの安全な実装と活用は、日本企業にとって事業拡大の「攻め」と、リスク管理の「守り」の両面で避けて通れない課題になりつつあります。
カレン氏は、AIのインパクトを過小評価していては、日本の産業が世界の潮流から取り残されかねないとの懸念を示しています。今後は、品質や信頼を重視する日本企業の強みを維持しつつ、小規模な実験的取り組みからAI活用を積極的に進め、変化の速い技術動向やルール整備の状況を継続的に把握していく姿勢が求められそうです。
