ニューヨーク市、新学期からAI禁止指針を発表 公立校60万人対象
米ニューヨーク市は9月2日、新学期から公立小中学校でのAI使用を全面禁止する指針を発表しました。世界的にも青少年のAI利用を制限する動きが広がっています。
米ニューヨーク市は2日(現地時間)、来週始まる新学期から域内の公立小中学校の生徒による校内でのAI使用を全面的に禁止する内容の指針を発表しました。同市のカマール・サミュエルズ教育長は、子どもの成長に役立つ人間的な交流や好奇心、創造性を守るための安全装置だと説明しています。ゾーラン・マムダニ市長も、IT業界がAIを活用した早期教育を必須と主張していることに対し、そうは考えていないとの見解を示しました。
ニューヨークは米国最大規模の学区とされ、公立学校に通う生徒全体の3分の2に当たる約60万人が、高校に進学するまで学校でAIを使えなくなります。小学2年生までは教室でのスマートフォンやタブレットPCなど個人用デジタル機器の使用も禁止されます。高校生は限定的にAIを使える一方、生徒と感情的な交流をする「AIチャットボット」の利用は認められません。教員についても、AIを使って課題を採点したり、卒業の可否を判断したり、カウンセリング方法を決めたりする際の支援は制限される一方、授業計画の作成や海外資料の翻訳目的での使用は認められています。
学校現場でのAI利用を規制する動きは欧州・中東・アジアにも広がっています。報道によると、ノルウェーは今年8月から小学校でのAI活用を禁止し、6~13歳の生徒は原則制限、14~16歳は教員監督下でのみ利用可能としました。同国は2024年から小中高校でのスマートフォン使用も禁止しており、AI規制はその延長線上にあるとみられます。ヨナス・ガール・ストーレ首相は、生徒の学業成績低下を指摘した上で、学校教育で最も重要なのは読み・書き・計算能力を育てることだと述べています。
中国も昨年5月に教育部が「小中学生生成AI使用ガイドライン」を発表し、小学生による自らコンテンツを作成できるAIの使用を禁止しました。中学生はAIが作ったコンテンツの論理構造を分析する水準、高校生はAI技術の原理を探究する水準での学習にとどめています。アラブ首長国連邦(UAE)も今年2月、13歳未満の生徒のAI使用を禁止する指針を発表し、13歳以上についても学習支援目的に限定し、試験や公式評価での使用を禁じています。
これらの国が共通して懸念しているのは、AIへの依存による基礎的な学習能力の低下です。経済協力開発機構(OECD)が発刊した「デジタル教育展望2026」によると、米ペンシルベニア大学の研究チームがトルコの高校生約1000人を対象にチャットボット(GPT-4)を学習補助として提供した実験では、AIを使えない状態で同種の数学・科学試験を受けさせたところ、GPT-4に依存した生徒の点数はAIを使わずに勉強した生徒より平均17%低かったと報告されています。OECDは、AIが即座にフィードバックを与えることで生徒が内容を十分理解したと錯覚しやすいと指摘しています。
一方で、AIを学習過程から一律に排除することは現実的ではないとの見方もあります。ビッグテック企業側は、AIが教員の時間を節約し、生徒に個別最適化された学習を可能にすると主張しており、スマートフォンやSNSと同様に一定の年齢まで使用を制限すべきだという議論が支持を集めている状況です。ユネスコは2023年に発表した「教育現場における生成AI活用ガイドライン」で、AIの使用を13歳以上に制限するよう勧告しています。
ニューヨーク市の指針は、青少年のAI利用をめぐる世界的な議論の中でも規模の大きい事例として注目されます。今後は、実際に学校現場で禁止指針がどこまで徹底されるか、また学習効果や生徒の情緒面への影響についての検証が焦点となりそうです。各国・各地域で異なる年齢制限や運用ルールが並行して試される中、教育現場でのAI活用のあり方をめぐる議論は当面続くとみられます。

