「フィジカルAI」が次の相場テーマに DMG森精機・ファナックに熱視線
AIブームの次なる波として「フィジカルAI」への注目が高まっている。工作機械大手のDMG森精機と、エヌビディアと提携するファナックが有力銘柄として取り上げられている。
生成AIによるソフトウェア・半導体関連銘柄の急騰から一歩進み、2026年の国内株式市場では「フィジカルAI」と呼ばれる領域が次の主役テーマとして急速に注目を集めています。フィジカルAIとは、デジタル空間の知性をロボットや工作機械などの物理的な機器に組み込み、自律的に動作させる技術の総称です。製造業や物流の現場を根底から変える可能性があるとして、国内外の機関投資家がその関連銘柄への組み入れを検討し始めているとみられます。
こうした流れの中で特に注目を集めているのが、工作機械大手のDMG森精機です。同社は近年、CNC(コンピュータ数値制御)工作機械にAIを活用した自動補正・予知保全機能を積極的に組み込んでおり、スマートファクトリー化の需要取り込みを加速しています。業績面でも急回復の動きが報告されており、受注環境の改善を背景に市場からの評価が高まっています。製造現場のデジタル化投資が欧州・アジアを中心に再拡大していることも、同社の追い風となっています。
もう一社として挙げられているのが、産業用ロボット・FA(ファクトリーオートメーション)の世界的リーダーであるファナックです。同社はエヌビディアとの提携を結んでおり、エヌビディアが推進する「Isaac」プラットフォームを活用したロボット向けAI学習基盤の構築に取り組んでいます。エヌビディアはここ数年、GPUによる生成AI需要の爆発的な拡大で世界的な注目を集めてきましたが、その次のステージとして産業ロボットへのAI実装を重要な柱と位置づけており、ファナックとの連携はその象徴的な動きといえます。
フィジカルAIが市場テーマとして台頭する背景には、日本の製造業が抱える構造的な課題があります。少子高齢化による深刻な人手不足、円安を背景とした国内回帰投資の増加、さらに半導体・電気自動車(EV)関連の設備投資拡大が重なり、高精度かつ自律的に動く機械へのニーズは急増しています。経済産業省の推計(報道ベース)では、2030年度における国内のロボット・自動化設備市場は現在の1.5倍超に拡大する可能性があるとされています。
一方で、フィジカルAI関連銘柄への投資には注意点もあります。工作機械やFA機器の需要は景気サイクルと連動しやすく、設備投資の先送りが起きた際には業績が急速に悪化するリスクがあります。また、フィジカルAI技術そのものはいまだ発展途上であり、現場での実装コストや信頼性の確保には時間がかかるとする見方も業界関係者の間にあります。テーマ性が先行して株価が大きく動く局面では、ファンダメンタルズからの乖離にも慎重な目が必要です。
それでも中長期の視点では、フィジカルAIは日本の製造業が競争力を維持・強化するうえで不可欠な技術として広がっていく可能性があります。DMG森精機やファナックのような世界的な技術基盤を持つ企業が、ソフトウェアとハードウェアの融合を進める中で、日本株市場においても「AIの恩恵が実体経済に波及する」局面を示す象徴的な存在となるかどうか、今後の業績動向や受注データを丁寧に追っていく必要があります。フィジカルAIが単なる話題にとどまらず、持続的な成長テーマとなるかは、2026年後半から2027年にかけての実需の広がりが鍵を握りそうです。
