IT企業代表がAIなりすまし面接を暴露、北朝鮮技術者関与の疑いも
AIを活用したエンタメ事業を展開する都内企業の代表がオンライン面接で遭遇したAIなりすましをXに投稿し、大きな反響を呼びました。北朝鮮のIT技術者による同種の事例は5000社で6500件以上に上るとみられています。
AIを活用したエンタメ事業を展開する都内企業「KOWRO」の代表、原田祐二氏が9月9日と10日、オンライン面接でAIによるなりすましと思われる人物に遭遇した際の動画をXに投稿し、話題になっています。10日の投稿には「人生で初めてAIが面接に来た動画を公開します。注意喚起も込めて」とのコメントが添えられており、9月15日16時30分時点でインプレッション数が2600万件を超えています。
原田氏の投稿によりますと、日本人エンジニアを名乗る男性は自らを「ご自身」と表現し、「ご自身が直接お話ししています」と回答したといいます。原田氏はこの言い回しに違和感を覚え、「ご自身とか自分であんまり言わないですよね」と指摘した上で面接を打ち切りました。テレビ朝日系(ANN)の報道でも、声と口の動きに一部ずれが見られたことが伝えられており、北朝鮮のIT技術者によるなりすましの可能性が指摘されています。
こうしたなりすましは近年、世界的に広がりを見せています。北朝鮮のIT技術者がAIなどを使って別人になりすまし、オンライン面接を受けたケースは5000社で6500件以上に上るとみられており、今年7月には日本やアメリカなど11カ国がこの問題について注意を呼びかけました。ITジャーナリストの三上洋氏によりますと、北朝鮮のIT技術者が他国の技術者を装って企業に侵入し、リモートワークで得た収入を北朝鮮に送金するほか、機密情報を盗み取り、その後ランサムウェアなどのサイバー攻撃に利用する例もあるといいます。
見破り方についても具体的な手法が示されています。三上氏は、顔の前で手を動かしてもらうことが有効だと説明しています。顔の部分だけを置き換えるAI技術を使っている場合、手を顔の前に持ってくると処理が追いつかず、不自然な動きになるためです。また、給料の振込先を暗号資産に指定したり、銀行口座が本人名義でなかったりする場合も警戒すべきポイントとして挙げられています。FBIはこうしたなりすましに関与したとみられる人物の指名手配書を公開しています。
手口はさらに巧妙化しているとの指摘もあります。Yahoo!ニュースエキスパートに9月14日に掲載された記事によりますと、北朝鮮側はイランやレバノン、シリア、南アフリカ、サウジアラビアなどにいる第三国の人材に接触し、実際の求職者を装わせてビデオ面接を受けさせたり、プログラミングなどの技術試験を代行させたりする手法に乗り出しているといいます。従来の「AIによるなりすまし」に加え、生身の協力者を替え玉として利用する新たな手法が広がっていることになります。
北朝鮮IT技術者によるなりすましをめぐっては、今年4月にも話題となった事例がありました。北朝鮮のIT労働者とみられる人物の面接で、指導者・金正恩氏を侮辱するよう求めたところ、相手が退出したとする動画がSNS上で拡散していました。
背景には、日本企業がIT技術者として外国人を転職採用するケースが大幅に増加している事情もあります。人材確保のためにオンライン面接や海外在住者の採用が一般化する中、本人確認を厳格に行う仕組みが追いついていない実態が浮き彫りになっています。
今後、企業側には本人確認の厳格化を含め、より慎重な採用プロセスの構築が求められそうです。顔の前で手を動かしてもらう、給与振込先を確認するといった具体的な見破り方が知られるようになる一方で、なりすましの手口自体も進化を続けているとみられ、企業と技術の双方でのいたちごっこがしばらく続く可能性があります。
